──そして夜。
一同は一度自宅に戻り、それぞれ準備を終えて再び、この場に集った。
びくびくと子犬のように震えて、最後まで反対勢力の枠から外れなかった来栖少年だったが結局、千夏が行くからという理由でひっ付いて来た。
「安心してください、朝比奈さん。何かあった時の為に拳銃らその他各種を持って来ました!」
電撃ネズミのリュックサックから、エアーガンと小型ゲーム機を出して力強く千夏を見る。
そのエアーガンで本当に退治出来るならばやって欲しいし、その小型ゲーム機でイオでも唱えられるのならば是非やってもらいたいものである。
「じゃ、行きますか」
「どうやって入るの?」
「体育館倉庫。一回戻ってこっそり鍵開けてきた」
「幸也やるぅ〜!」
「いやさ、ちょっと、まじでやんの!?」
「この期に及んで情けないぞ、駿。それでも男か」
「……わかったよ」
「安心してください朝比奈さん、この二段式火縄銃で──」
「…………」
学園七不思議探索を兼ねた季節外れの肝試し大会が始まりである。
夜の学園の雰囲気は劇的に昼間のそれと変わっていた。
当たり前といえば当たり前のことなのだが、その変化はやはり不気味である。普段気にしない小さな音までも、何かよからぬことを連想してしまう。
幸也を先頭に女子組みが続き、しんがりは駿と来栖のパーティーで一行は離れず団子状態になりながら一階から手当たり次第探索した。
不気味ではあるが、決して怪しげなものは見つけられずに三階──探索のゴールへとたどり着き、一同はふぅ、と詰めていた息を吐いた。
「特別、何もなかったな」
「やっぱり噂止まりだったってことなのかな?」
「でもさ、何かさ、一つ夢が壊されたような気分で少しショックだよな」
緊張が一気にほぐれたせいか、皆に笑顔が浮かぶ。ただ一人、来栖少年だけは未だに落ち着きなくそわそわしていた。
(嫌ならこなきゃいいのに……)
とは思ったが、一応ここまでともに来た敬意をはらって口の中で濁す。
学園七不思議の一つ、『闇夜に開かれる裏生徒会』はデマだったという結論に至り、一同は帰り支度を始めた。
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