「──死にたいのか?」



苦しかったのを覚えている。
苦しくて、苦しくて苦しくて。このまま死んでしまえば楽になるのだろうなあ、と思っていた。

同時に。

憎くて。死ぬぐらいなら、どうせ死んでしまうならばと、破壊的なことを考えてもいた。


そんな時だ。東の空を背後に、澄んだ黎明色の瞳がじっとこっちを見ていたのに気づいたのは。
僕よりも小さな少女。なのに。僕よりもとても大きな存在のように感じた。





〈──だとしたら?〉

「くだらぬ」

〈…………〉

「だが、わらわもお前と同じぐらいくだらない存在だ」



少女の小さな手が僕の頭にそっとふれて、なでなでと優しく撫でてくれた。……とっても冷たい手だった。




〈冷たいね〉

「……なにがだ」

〈手が、とっても冷たい〉

「…………」





昔の記憶。
僕とカノジョが出会ったあの日。


ただひとつとなって、死するべき塊だった僕を手元に置いてくれた。

けど、まだ選んでもらえたわけではない。選択はカノジョに委ねられている。



矛か。
それとも盾か。

破滅か。
それとも再生か。

僕か。
それとも別の──



カノジョはまだ、限りなく無色だった。




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