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「あの……キミ、大丈夫?」

ぺたり。と額に冷たいものが触れた。
途端に意識はそこに集中し、おかげでなんとか気を失わずにすんだようだ。

「あ……なたは?」

目の前にいたのは、見知らぬ男性。

「……そこの路地から出てきたらキミが倒れていたんだ。それで……その、心配になって」

「そう……あり、がとう」

彼の肩を借りて少し先の木陰に移動すれば、少しずつ意識がはっきりとしてきた。
真っ白な髪と穏やかなその紅と蒼の眼差しに、一瞬目を奪われる。

「大丈夫?」

「ええ……もう少ししたら私の妹が来るはずだから」

「……そっか、」

私の言葉に、彼は少し残念そうに眉を下げた。
それを見て、なぜだろう……普段なら氷月が来るのが待ち遠しいのに。
このまま時間が止まればいいのに。と、考えている自分がいた。

「「あの……、」」

同時に口を開き、お互い顔を見合わせると、彼はくすくすと笑い出した。

「……?」

私が首を傾げると、ごめんね、と返ってきた。

「笑うつもりはなかったんだ。ただ……なんでかな。少し、嬉しくなって」

「そう、」

そう言ってはにかむ彼の笑顔に、なんとも言えない気持ちになる。
「あの……さ、」


「紗雪ー!」


改めて口を開いた彼の言葉を遮るように、聞き慣れた声が私を呼ぶ。
彼は私と氷月を交互に見て、数回瞬きをした。

「キミ、紗雪っていうんだね。……また、会えるかな?」

私は街の入口の方を指す。

「しばらくは……街の外れの白い家にいるわ。……ありがとう」

そして、ゆっくりと氷月の待つ方に向かって歩き出す。
なんでだろう、一歩彼から離れるごとに胸がもやもやとする。

「ごめーん、つい中で姫雪と話し込んでてさあ。あの人、誰?」

「さっきちょっと倒れそうになったときに……助けてくれたのよ」

「え、うそ?!大丈夫なの?」

「ええ。少し貧血を起こしただけだから」

「ならいいけど……あ、今日あんまり人いないみたいだから、また今度出直そうよ」

「……そうね」

少し後ろを振り返れば、既にそこに彼の姿はなかった。
そういえば彼の名を聞きそびれてしまったと少し後悔したが……その数日後、私が彼の名を知るのと彼との関係が大きく変わるのは……また、別の話。


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テーマ「人外ファンタジー」
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