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カーテンの隙間から橙が部屋へと射しこむ時間帯。
コトコトコトコト。
トントントン。
何かを煮込む音と一定のテンポで包丁がまな板を叩く音が、テレビの騒がしい音に比べてひっそりと部屋には響いていた。
だがふいにその音はやみ、代わりに音を立てていた本人がキッチンから出てきて声を発した。


「おーい、誰か醤油買ってきてくれないか?」

「醤油だって〜、紅」
《今日は魚かの〜、砂慈》
「秋刀魚がえぇね〜、旦那」
「私は刺身ですかね〜、黎韻」
「俺は今日いらない、泉麗」

「だから俺に買ってこいと?」


まるで先ほどの包丁の音のようにトントンとテンポよく回された会話のまさかの終着点に、泉麗は顔をひきつらせた。


「つーかだらけすぎだお前ら!そして黎韻っ、だから夕飯前にサイコソーダ飲みすぎるなって言っただろ!?」

「2本しか飲んでない」

「えーっ!私の分とっといてって言ったじゃん!?醤油のついでに買ってきてよ!」

「お前が行け。そしてついでに俺のアイス買ってこい」

「あーっ二人ともずるいでー!じゃあ僕ハーゲ○ダッツがえぇ!」

「だーッ!いいからじゃん拳して負けた奴買い出し行ってこい!」


泉麗が怒り出したため、渋々じゃん拳をするのだった。
そしてもちろん負けたのはソラだ。
まるで仕組まれていたかのような鮮やかな負け方だった。
一人ではつまらないからと誰か行かないかと誘うが、全員声をそろえて断った。
どうやら夕方のくつろぎタイムを満喫したいのはみんな同じのようだ。
ソファでくつろぐ仲間たちを恨めしげに見て、諦めて一人で行こうとしたソラだったがちょうど玄関の扉が開いて留嘉が帰ってきた。


「あ、おかえり留嘉」

「ただいまソラちゃん。どこか行くの?」

「醤油の買い出しでーす」

「じゃあ僕も付き合うよ」

「え?」

「そろそろ暗くなるからね。女の子一人で行かせられないよ」


微笑んで当たり前のようにさらりと言う留嘉に感激だ。

相変わらずのフェミニストぶりには胸を打たれる。

他の男どもに見習わせてやりたいくらいだ。


「っ留嘉!本当に留嘉はいい子だね!部屋でだらけてる奴らとは大違いだよ…っ!」

「僕もホンマは心配してたで〜」

「シャラップ!さ、留嘉いこいこ!」

「うん」


ソファの背もたれに寄りかかりながら気だるげに言う砂慈の嘘臭い言葉は一蹴し、ソラは留嘉の手を掴むと部屋を後にしたのだった。


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