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次の旅に備えて食料を調達しに行ったルルが、今日まで泊まっていたポケモンセンターに帰ってきた。いつも通り特に気にせず、読んでいた雑誌に視線を戻した。

「もも」

「……………………なんですの」

「キミに客人だ」

「!」

無視を決め込もうと思ったが返事をしてしまった。それにしても、わたくしに客人?珍しい、どなたかしら。
何故かにやにやとしているルルを押し退け、扉を開けた。


「あ!ももちゃーん!!」

「っ、え、あ、澪葵!?」

扉の向こうにいたのは、見覚えのある水色のツインテール。小柄なその身体は言葉通りわたくしに飛び付いた。

最後に顔を見たのはいつだったか。驚きと懐かしさが混ざりあい、けれどそれよりも会いに来てくれたという事に対する嬉しさが勝り、わたくしも素直に抱き締め返した。

「久しぶりですわね澪葵……どうしてここが?」

「んー…レイ君とデートしてたらね、あれ?あの人見たことあるーと思って声かけたら、向こうの人もあたしのこと知ってたの!」

「………あの人……?」

「うん!ルルさんルルさん!ワタシのももならここにいるよーって」

(誰がワタシのももだ)

戻ったら絶対ぶん殴ってやると密かに誓い、澪葵にはそうですのとだけ返した。しかし一つだけ疑問が。デート中だったということは、玲士さんも一緒のはず。ところが、彼の姿はどこにも見つからないのだ。

「あの、澪葵?」

「なあに?ももちゃん」

まさか、と嫌な予感が頭を過る。

「……その、玲士さんは…?」

「ああ、レイ君?レイ君なら………あ、あれ?」

あれあれ、と周りを見渡す澪葵。ああ、やはりこれは、嫌な予感が的中したようだ。

「……お……置いてきちゃった…!!!」

「(やっぱり……)はあ…最後に別れたのは?」

「別れたっていうか、ルルさんに付いていった時にはぐれたのかも…どうしようももちゃん…!」

「落ち着きなさい澪葵。まだまだ時間はあるから、わたくしも一緒に」
「あれ?ももじゃないか」

「「!!!」」


それに澪葵ちゃんも、と続く第三者の声によってわたくしの言葉は遮られた。これが赤の他人ならばそれほど動じなかったものの、その人物の声はわたくしを驚かせるのには十分だった。

「っ…ホーク様!?」

「もう出発か?ならグッドタイミングだったみたいだな」

はっはっはと笑う第三者、もといホーク様は先ほどまで散歩に行かれていた。違いますのと否定しようとしたが、それより先に口を開いたのはなんと澪葵で。

「ホーク君、実はあたしの彼氏のレイ君が行方不明なの!」

「ちょ、澪葵…!?」

「アタシノカレシノレイ君?ずいぶん長い名前の人だなあ」

「違いますわホーク様!!根本的に間違ってます!!」

「それでね?もしよかったらももちゃんと一緒に、ホーク君も手伝ってくれないかなあって」

ね?と憎らしいほど眩しい笑顔のままわたくしにウインクしてきた澪葵。なるほど、そういうことですのね……

「ああ、俺でよければぜひ力になりたいが」

「やったー!!よしっ、そうと決まれば早速レッツゴー!!」

「………はあ…」


そうだ、ホークさまが断るはずがないのだ。もとより心優しいお方だし、わたくしの友人の頼みであればなおのこと。

澪葵の企みにひやひやしながら、早々に玲士さんを発見しなければと覚悟を決めた。


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