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「それで、アタシノカレシノレイ君はどんな人なんだい?」

「ほ、ホーク様!ですからそれは本名ではなく…」

「レイ君はねえ、髪が紫でねえ、目が優しくてねえ、まずレイ君自体が優しくてねえ、それで…」

「澪葵も!!のろけるだけなら手伝いませんわよ!?」

「え、ごめんってばももちゃーん!ホーク君と喋ったからって怒らな」
「誰もそれくらいで怒りませんわよ!!」

「こらこらもも、近所迷惑だぞ」

「あうっ、すみませんホーク様……」

(近所迷惑……?)


ポケモンセンターを出てから数分。やはり未だに玲士さんは見つかっていない。ホーク様は未だに玲士さんの名前を間違えているし、澪葵は澪葵でのろけるし…え、別に羨ましくなんかありませんわよ。

それにしても、先ほどから人人人。それもそのはず今日は日曜日。とても簡単に人一人を探せる状況ではない。ここはわたくしが原型に戻って、空から探した方が早いのでは?

「うーん…レイ君ってばどこに行っちゃったのかしら…」

「あなたが勝手に離れたんでしょう……いいですこと澪葵。今からわたくしが空から」
「あ!そーだあたしったら喉乾いてたんだったわ!!」

「は?」

「ちょっと自動販売機探してくるから、二人でお話でもして待っててね!」

「あ、ちょ、澪葵!?」

白々しいにもほどがある。にーっこりと可愛らしい笑顔を浮かべたままどこかへ走り去ってしまった澪葵。自動販売機はそっちじゃありませんわ。むしろ正反対ですわ。ていうか、あなたまで行方不明になる気ですの?

ツッコミ所が満載の彼女の行動に一人ため息を吐いた。

「俺も喉が渇いたなあ…」

「え!?ほ、本当ですかホーク様!!」

「ももは?俺が買ってきてあげよう」

「そそ、そんな滅相もございませんわ!!むしろももめがホーク様の分も……」
「きゃああああああああ!!!!」

「「!?」」

突如放たれた大きな悲鳴。それは先ほどまで楽しげに話していた声そのもので。

「あれ、澪葵ちゃん?」

のんびりと話すホーク様だったが、そんな彼の声の調子とは裏腹に、当の澪葵は必死に何かから逃げていた。あのしましま模様は……あ、

「……ゼブライカ…!?」

「助けてももちゃあああん!!!!」

見たところゼブライカは怒りに任せて澪葵を追いかけている。こんな街中に野生の個体とは考えにくいし、どこかでのバトル中に暴走したのだろうか。

よく見ると澪葵だけじゃない、トレーナーや一般市民までなりふり構わず追い回している。澪葵はそのたくさんの人に混じって逃げてきたのだ。ゼブライカを止めるのが第一だろうけれど、澪葵との相性は最悪。まずは彼女を安全な場所に行かせなければ。

「ホーク様、ももめが澪葵をどこかの建物の屋上へ…」
「待ってろ澪葵ちゃん!!」

「あ!ちょっと待っ…ホーク様ぁ!!」

わたくしの話を他所に、瞬時に原型に戻ったホーク様は、そのままゼブライカに向かって攻撃を開始した。しかし忘れてはいけない、わたくしたちひこうタイプもゼブライカとの相性はよくないのだ。

『ラァァァァイ!!!!』

『っ、でんげきはか…!!』

「ホークく…危ない!!」

『!?』

「澪葵!?」

独特の鬣に電気を溜め始めたゼブライカとホーク様の間に無理やり割って入った澪葵。わたくしもすぐさま原型に戻り、澪葵を掴もうとしたが、




「まったく、どうしてお前はいつも騒動の中心にいるんだよ……」

『!』

『あ、』

「っ…レイ君!!!」

それよりも先に現れた男性が、ゼブライカの攻撃をすべて受け止めたのだ。何度かお会いした彼に、電撃攻撃は毛ほども食らわない。

『玲士さん…』

「すみませんももさん、また澪葵がご迷惑を…」

「違うわよレイ君!!レイ君が迷子になったから探してたんじゃない!」

「誰が迷子だ!お前が俺を置いて勝手に迷子になったんだろう!」

『君がアタシノカレシノレイ君か?』

「え、」

『ほっ、ホーク様!!ですからそれは…』
「すみませーん!!僕のゼブライカが……!」

「「!」」





すっかり放置していたゼブライカのトレーナーらしい少年が現れ、騒動はようやくおさまった。バトル中に混乱したゼブライカはそのまま街中を暴走していたらしい。

玲士さんも無事見つかったし、誰も怪我ひとつ負わずに終わってよかった。気がつけば空はすっかりオレンジ色に染まっていた。


「ももさんもトマホークさんも、今日は本当にすみませんでした」

「もう慣れましたわ…澪葵、勝手にほっつき歩いちゃダメですわよ?」

「あ、ももちゃんまで子供扱いするー!!あたしはもう大人だから勝手にほっつき歩いても大丈夫なんですー」

「ならせめて俺に迷惑をかけないようにほっつき歩いてくれ…」

「何よそのいつも迷惑かけてるみたいな言い方!!」

「はっはっは、本当に仲良しだなあ君たちは」

「まあ、あの二人は恋人同士ですから…」

「コイビト…?友達や親友よりも、仲がいいのか?」

「え…それは……」

「そうよ!!だからはやくホーク君もももちゃんと恋人に」
「「澪葵!!!」」








我ら恋する乙女組!
(どうすればコイビトになれるんだ?)
(簡単よ!ももちゃんに一言「愛してr)
(いい加減になさい澪葵!!!)
(すみませんももさん本っ当にすみませんももさん)



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