1 「なぁんですってぇ――――――――――?!」 ポケスロン会場の控え室に、少女の声が響いた。 同室で柔軟をしていた、長年のパートナーであるネオラントの浪路が怪訝な顔をして振り向く。 「どないしはったん、澪葵」 「どーもこーもないのよ、こうしちゃいられないわ!レイ君が風邪引いて倒れたっていうのよ!」 ポケギアを握りしめて叫ぶのは、 『人畜有害』 『目的のためには手段を選ばない』 『彼女のいる場に騒動あり』 と、いう三種の神器(?)の名で親しまれているマリルリの澪葵。 「あらまぁ。ほな、今日来れんのやね。せっかく招待したんに、残念やねぇ」 言って浪路は伸びをひとつ。 腕に通していたゴムで、その長い髪を束ねる。 「熱?風邪?あたしのレイ君が?!……こーしちゃいられないわ。ナミちゃん、あたしレイ君のお見舞い行ってくる!」 「……は?澪葵、何考えてますのん?うちらの出番まで、もうそんな時間あらんよ?」 「大丈夫大丈夫!じゃーいってくるね、ナミちゃん!」 「あ、ちょっと……もう、ほんにしようあらんねぇ」 引き止めようとする浪路の声を華麗に聞き流し、澪葵は転げるように控え室を飛び出していった。 残された浪路はため息をひとつつき、嵐の去った方向に手を振った。 |