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いつものデートの待ち合わせ場所。
いつものように少し早めに着いた玲士は、ゆったりとその長身を壁にもたれかけさせ、自身の恋人が来るのを待っていた。
彼女が遅れるのは、今に始まったことではない。

「レイくーん!」

いつものように耳慣れた声に呼ばれ、玲士はその声のする方へ振り向いた。
そこには見慣れた水色の恋人がいる……はず、だった。

「…………澪葵?」

しかし、彼が彼女を呼ぶ声は疑問形だった。
まるで、見知らぬ人に突然親しく声をかけられたときのような、そんな反応。

「もー!レイくんってば何なのその反応!」

目の前の彼女はぷりぷりと頬を膨らませる。
その仕種は、どう見ても待っていた彼女のもの……なのだが。

「あー……、その格好は何だ?」

何と声をかけるべきか必死で考えて、ようやく絞り出したのはそんな間の抜けたもの。

彼の言うところの"その格好"は、いつもは高めの位置のツインテールになっているはずの髪はくるくるとパーマがかけられ、普段は化粧気のないナチュラルな顔もバッチリメイクが施されている。
いつもより視点が高いことに気が付いて足元に目を遣れば、厚さ10cmを超える厚底ブーツを履いている。

……が、普段から慣れていないため過剰なまでの厚化粧はその幼い顔立ちに異常なまでの違和感を与えていた。

「えっへへー、どう?似合う?」

しかし、玲士の葛藤をよそに澪葵はご機嫌である。

「いや、似合うというか……その、一体またどうしてそんな格好をしてるんだ?」

すると澪葵は、ふふんと胸を張る。

「あのね、今まではあたしの身長を伸ばそうとしたりレイ君の身長を縮めようとしたけどもうネタ切れなの。でも、身長が低くたってちゃんとお化粧とかをすれば大人に見えるでしょう?あたし、今朝なんて5時から起きてがんばったのよ。まあ、その甲斐あって美しいレディの顔を作る、ってことには文句なしに大成功だわね」

「……その自信は一体どこからやってくるんだ……?」

突っ込みどころは多々あったのだが、ありすぎて忘れてしまったため、とりあえず玲士は最後のあたりに突っ込みを入れてみた。

すると澪葵は、だってね、と得意げな表情を浮かべる。

「聞いて、レイ君。あたしね、ここに来る途中にナンパされたのよ」


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