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「今日パーティを組ませてもらう、ニドキングの玲士だ。よろしく頼む」

大きな大きな玲士くんは、目の前の少女に挨拶をしました。
小さな小さな澪葵ちゃんは、まぁるい大きな目を見開くと、きょろきょろと辺りを見回したあと、近くのタオルを頭から被って言いました。

「……玲士くん、おっきいから怖い」





「ああ、澪葵な。あの子、ちょっと人見知りするんよ。多分すぐに慣れるさかい……気ぃつけよ?」

飛び入りで参加し、急遽本日チームを組むことになった相手に怖いと言われた気まずさで澪葵の部屋をあとにし、少しめげたくなりながらも彼女のパートナーがいるという次の部屋へ挨拶に向かった玲士だった……が。

キヲツケロ。

目の前の少女……とみまごうばかりの少年、浪路は、確かにそう玲士に忠告をした。

「は……?」

「いやね、あの子も悪い子やないんよ。ただ……ちょっとなぁ、」

「……何かあるのか?」

「まぁ……うち、あの子とは昔馴染みなんやけど……端から見てる分には楽しいんやけどねぇ」

浪路はそれ以上は言葉を濁して苦笑するばかりで、一体何に気をつければいいのかわからない……が、その直後、彼はその意味をはっきりと理解するようになる。




「ナミちゃん、ナミちゃん。ちょうどいいとこに」

ロッカーの前できょろきょろと辺りを見回していた澪葵は浪路の姿を見付けると手招きで呼び寄せた。

「どないしたん?」

「うん。ちょっとそこに立ってくんない?……ううん、まっすぐじゃなくてもっと前傾に……うん、そのままストップね」

そして浪路に跳び馬のような前傾姿勢を取らせた、次の瞬間。

「よっし。いっくよー……ほっ!」

微妙に膝を曲げた、地味に辛い体制を取っていた浪路の背中に飛び乗ったのだ。
しかも、土足で。
これには玲士も驚いた。

「ちょ……ちょっと澪葵?!」

「あん、ナミちゃん動かないでよ!あたし、この箱取りたいだけなんだから……っと、」

ロッカーの上にあったお目当ての箱を手に取ると、彼女は満足そうに浪路の背中から飛び降りた。

「澪葵……それくらい言うてくれたら、うち届くさかい。椅子に乗ったら」

「あははは、ごめーん。ほら、結果オーライだよ」

えへへ、と悪びれなく笑う澪葵だったが、そんな彼女を見て玲士は眉を潜めた。

……これで3人目、か。

ふと、玲士はそう思う。

3人……即ち、先程自己紹介を終えてから今までに、彼女の被害に遭った人数である。

1人目は、飛んできた虫に驚いた澪葵が振り回した傘の直撃を受け、ポケモンセンター送りとなった。

2人目は、澪葵の顔なじみなのだろう。背を伸ばしたい、と言った彼の言葉を通りすがりに聞いた澪葵は、何を思ったか彼の顎を掴んで思い切り上に引っ張ったのだ。
これで背が伸びるのだ、と力説しながら。
しかし、バキャッと不吉な音を立て、意識を失った彼もまた、ポケモンセンターで休養中である。

そして3人目……先程の浪路。
少し鈍いと言われる玲士だが、嫌でも浪路の忠告の意味を理解した。

側にいるだけで被害を受ける。イコォル、とても危険。
正に彼女、台風の目のような存在である。


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