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――あれから半年。

最初は人見知りしていた澪葵だったが、玲士が無害だとわかると段々と側に寄ってくるようになり、いつしか浪路を含めた3人で行動することも多くなった。
そして、それに比例するかのように、玲士が彼女から被害を受けることも必然的に増え、今までに幾度となく巻き添えを喰らってきた。

やはり一番多かったのは怪我である。
傘やかばんなどの日用品はともかくとして、上皿天秤や鉄鍋をぶつけられたこともある。
なにかがおかしい。
もしかしたら某年ついにこなかった恐怖の大王や、これから訪れるかもしれない某年の世界滅亡の予言の正体は、実は澪葵なのかもしれない。



……それはともかく、とりあえず横に置いておいて。

「ごめんねーレイ君。あたし、悪気はなかったの。これっぽっちも。いやまじで」

玲士は現在、ポケモンセンターに運び込まれていた。
恐怖の大……澪葵にじょうろ(鉄製)で頭を殴られて。
どうしてじょうろなんかで頭を殴られたのか思いだそうとしたが、それはやめておけと本能が告げたため、記憶の奥底に押し込めておいた。

「いや……構わない。それよりも澪葵、もう夕方だからそろそろ帰ったほうが……、」

窓の外に視線をやれば、夕陽で真っ赤に染まった町並みが見える。
そして、視線を窓の外から澪葵へと移した……が。

「……澪葵?」

いつもは溌剌とした彼女だが、今にも泣きそうな笑みを浮かべて玲士のことを見つめていた。

「あたし……レイ君に付き纏うの、やめる」

「……は?」

あまりに突然な彼女の言葉に、玲士はその切れ長の目を見開く。

「だって、今まで何度もレイ君に怪我させちゃったし、今回は入院までしちゃうし……!」

「いや……べつにこれは、」

「あたし、レイ君といるといつも以上に手加減できないからさ。レイ君の怪我するとこ、見たくないし……、」

「…………」

今まで見たことのない彼女にどう声をかけていいものか悩んでいた玲士だったが適当な言葉が見付からず、ただ彼女を見つめ続ける。
視線の先の彼女は、ドアノブに手をかけた。

「じゃあね、レイ君。ばいばい」





彼が引き止める間もなく。
水色の小さな少女は、ぱたりと扉を閉め、出ていってしまった。


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