月廻ル丘デ


ざあ、と夜風が駆け抜けた。
浅葱色の長い髪が、夜闇に溶けるのを横目で見遣る。


あれから幾夜廻ったろうか。
太陽のような娘だった。
あれは……私には、眩しすぎた。


ぐるぐるとあの小娘の台詞が頭を巡る。

「本当の名……か、」

危うく口を滑らせるところだった。
あの小娘、何故か心を許してしまいそうになる何かがある。
……しかし、あの娘は知らぬ方がいい。

私が……いや、私たちが背負う罪科など知ったところで、あの娘は住む世界が違う。

ならば、あの娘が私の名など知ったところで意味はない。
"其れ"はそういうものなのだから。


我らの罪科を知って尚、それを受け入れるという者に出会うときこそ……我らの罪が雪(スス)がれるとき。

嗚呼、其れは私の代で断ち切られるのか……それとも、やはり永劫続く罪なのか。

しかし、私はこの運命を恨むまい。
むしろ、先人達に感謝さえしよう。
この運命を背負うのが私でよかった……と。


夜空を見上げれば、あの時よりも少し欠けた月が西の方にあった。

次に私の元を誰かが訪れるのは……月が幾度廻ったときなのか。
何度廻れば、我らは赦されるのだろうか。


……いや、考えるのはよそう。
じきに夜も明ける。

私は踵を返し、月廻る丘をあとにした。


一陣の風が、吹き抜けた。











……とうとうやってしまった。
碧翠関係の「七ツの大罪」シリーズです。

見てわかるように、以前書いた「満月の〜」と繋がってます。
一応カテゴリとしては中編くらいにしたいなぁ、と。
10話前後での完結を目標に。

補足ですが、碧翠の「たった一人の大切な人」は、別に恋人に限ったわけではありません。
誤解を招きそうなので、一応補足でした。
(これからお友達ができていくなかで出会えたら素敵だなぁ…なんて!)

こちらもよろしくお願いします@@


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