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スウ、と狭間が開いた。

辺りに誰も見当たらないことを確認して、空間から降り立つ2つの影。
白を基調とした女と、ピンクアッシュの髪をもつ少女。

彼女達が降り立った途端、狭間は虚空へと消える。
ただ青空が広がるだけの、狭間のあった場所を見つめて少女は不思議そうに首を傾げる。

「着きましたよ」

そんな少女に、女は静かに呼びかける。
慌てて少女は振り向き……そして、目を見開いた。

「え……?」

彼女から出てきたのは、僅かに驚きを含んだ声。

「ここ……カノコ?」

彼女が目にしたのは、当たり前のようにそこで育ち、よく見知った町だった。
女は小さく頷く。

「ええ……ただし、私のセカイの、カノコタウンですが」

言われなければそうだとは気付かないほど、それは全く同じ町に見えた。
少女は不思議そうに辺りを見回す……が、やがて先に歩きはじめた女の後を小走りに追いかけた。

程なくして女が立ち止まったのは、一際大きく目立つ建物の前。

「研究所だ……、」

その建物もまた、少女にとっては馴染みのあるものだった。

「……さ、早く中へ。カノコでは……あまり貴女を他人に見られたくありません」

そう言って女は断りなく扉を開き、少女に中へ入るよう促す。

「……ふほーしんにゅー?」

「だからそういうのじゃありませんってば!まったく……どうして貴女はそう人の話を茶化すんですか……。とにかく、早く中へ」

はぁい、と少女はいたずらっぽく笑い、女が促すまま扉の中へと入る。

建物の中を見回すと、間取りは以前向こうのイッシュで入ったときとそう大きくは変わっていないようだ。
しかし、この研究所の主は目の届く範囲には見当たらない。

「……アララギ」

女が奥に向かって呼びかけると、ガタガタと人の気配が動いた。

「ハーイ、君が"柱"……いや、ユイコだね」

「えーと……?」

少女……ユイコは目の前にいる山吹色の髪が眩しい女性を凝視し、首を傾げた。
それはよく見知った姿をしているが、どこか少し違うような気もする……そんな、違和感。

「セルディア、それにユイコ。立ち話もなんだから、とりあえず奥へ行きましょう」

彼女が促すと、女……セルディアは小さく頷き、そしてユイコの背中をそっと押した。


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