2 「……っ!」 時を同じくして、"彼女"は、神殿の中で崩れ落ちた。 顔色は蒼白。 その表情は、みるみるうちに絶望に彩られる。 「失われた……"セカイの鍵"が失われてしまった……、」 ゆらり。 "彼女"はゆっくり立ち上がる。 「探さなくては……"セカイの鍵"を、」 そして"彼女"は神殿の最奥部にある、自身よりも少しばかり大きな姿見の前に立つ。 しかし不思議なことに、そこに映し出されたのは"彼女"ではなかった。 それは歳の頃なら16、7歳の少年少女が談笑する姿。 愛おしそうに、そしてそれよりも切な気にその様子を見つめ、やがて何かを決意したようにもう一度その様子を見据える。 「守らなくては……私のセカイを、」 身勝手なのは百も承知だ。 それでも、 「どうしようもないこんな私のセカイでも……それでも私は、このセカイを愛しているから」 そして"彼女"は、瞳の色を絶望から確固たる意志に変え、静かに目を閉じた。 誰も知ることのない、狭間の物語。 |