3 「LDS、に……」 まさか予想もしていなかった事実に、彼女は驚きの色濃い声を上げる。 「ええ。詳しい説明は省きますが、とにかく貴女は今、意識だけがこちらに来ている状態だと思ってください」 「ふぅん……まあ、死んでないならいっかなぁ」 予想外にあっさりと納得したことに、逆にセルディアの方が驚いたようだったが、しかしすぐに話を続ける。 「……とにかく、ここでの役目を終えれば……あなたは、元いたセカイへと戻れますから。もちろん、あなたが望むのであれば、ここで生き続けることもできますが」 臥せ目がちなセルディアの表情からは、その真意を読み取ることは難しい。 「うーん……できれば帰りたいかなぁ、なんて。お父さんやお母さん、アスナやカインにまた会いたいし」 そう言った彼女の表情は笑ってはいたが、どこか寂しそうな色を帯びていた。 ――無理もない。 しかし、やらねばならない。 セルディアは、小さな罪悪感に囚われる……が、だからといってここで計画を中止しては、このセカイが最悪滅んでしまう。 「そうですか……では、早く元のセカイに戻れるよう、早速本題に入りましょう。アララギ、」 「ええ、わかってる。壱樹!」 セルディアの合図でアララギが部屋の向こうに声をかける……と、 「え……うわ、うわわわわ?!」 妙に慌てた声に続いて、ガタタタ!と大きな物音が響き渡る。 「あっちゃー……ちょっと!壱樹、壱樹?!」 そのけたたましい音の犯人であろう名を呼びながら、アララギはその方向へと向かう。 「壱樹、さん?」 「えぇ。彼にはあなたのサポートをお願いしています」 セルディアの言葉に、ユイコは首を傾げる。 「え……だって、サポートはセルディアさんが……、」 しかし、セルディアは。 ゆっくりとその首を横に振る。 「あなたについていたいのは山々です。しかし、私はこのセカイの管理人……あまり長い間、その座を空白にするわけにはいきません」 こうしている間にも、セカイの軌道は大きく逸れている。 少しでもそれを元に戻し、抗い続けなければ……このセカイは、ただ滅亡を待つばかりのセカイとなってしまう。 異なるセカイで何が待ち受けているのか……ユイコは珍しく、不安げに眉を下げた。 そのとき、だった。 |