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「それにしてもこんなに早くに連れてくるなんて思わなかったわ。セルディア、あなたどうやったの?」

しかしセルディアはその問いには答えず、彼女はそんなセルディアに苦笑した。

奥の部屋へと通され、アララギとユイコが向かい合い、ユイコの隣にセルディアが座る形でテーブルについた。

アララギはテーブルの上でゆったりと指を組み、そして口を開く。

「さて……自己紹介がまだだったね。私はアララギ。このイッシュ地方を中心に、ポケモンの起源について研究をしているわ」

彼女がそう名乗った途端、ユイコは首を傾げた。

「アララギ……博士?うそだぁ、だってアララギ博士は向こうのセカイに、」

しかし、ユイコの言葉に応えたのは、アララギではなくセルディアの方だった。

「いいえ、ユイコ。間違ってはいませんよ。この者はアララギ……私の協力者であり、そして、」

彼女は一度そこで言葉を区切る。

「……そして、あなたのセカイのアララギと、意識を共有する者」

彼女の説明に、ユイコはうーんと唸る。
どうやら、合点がいかないらしい。

「つまり……えーと、同一人物?」

彼女の頭には、既に無数のクエスチョンマークが浮かんでいる。
セルディアは「いいですか、」と前置き、

「貴女自身も、実際は向こうでのユイコそのものではないんですよ。向こうにいた貴女の意識を、こちらへ連れてきたのです」

「え、でもあたし……、」

ユイコは自分の身体を見る。
鏡を見たわけではないが、顔の横にあるピンクアッシュは間違いなく自分の髪だ。
言いたいことを察したセルディアは、口を開く。

「貴女、そしてアララギは偶然2つのセカイでほとんど変わらない容姿をしています……が、中には同じ意識を異なる容姿で共有している者もいます。……先程の問いの答えですが、このアララギと貴女のセカイのアララギも、本質的なところは同じです」

言われて目の前に座る彼女をよく見れば、ユイコのよく知るアララギと同じ爽やかさが感じられる。
その雰囲気の一致に、納得はしないようだったがとりあえずユイコは「ふぅん」と頷いた。

「……続けましょう。貴女は確かにこのセカイで一度死にました。それは、貴女も夢を通して知っていますね?」

ユイコは頷く。

「そうだ……あたし、ここではもう死んでるんだよね。あれ、でもどうしてこの身体とか……、」

「"死"というのは、そのセカイへ行く術を失うこと。確かに一度貴女はこのセカイへ来る術を失いました」

淡々とセルディアは事実を告げる。
しかしその声は、思いを押し殺しているようにも聞こえる。

「……ただし、私のような管理人がいれば、それを可能にすることができます」

「んっとー……よくわからないんだけど、つまり、元いたセカイではあたしは死んでるってこと?」

しかし、ユイコの疑問にセルディアは首を横に振る。

「いいえ。少し深く眠っているだけです。貴女のセカイでは、LDSと呼ばれていたはずですが」

新たに告げられた事実に。
ユイコは、小さく動揺した。
それは、普段の彼女からは決して想像できない様子だった。


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