3 聞こえてきたのは、戸惑いの色濃いどよめきだった。 3人はその声が聞こえる方に目を遣れば、少し奇妙な人だかりが見える。 その中心にいたのは、中年と呼べる歳をやや過ぎたくらいの、黄緑色をした髪が印象的な男だった。 宗教的ともいえるその独特な服装は、ゆるやかな空気の流れるカラクサタウンでは浮いているようにも思える。 「……?何やってんだ?」 「行ってみようぜ、カイン、マガツ!」 「あ、おいアスナ!……ったく、」 言うが早いか、アスナはミジュマルを抱えて人だかりの方へと走り出す。 残された彼らも仕方なく小走りに彼女の後を追った。 近づくにつれ、大きくなるどよめき。 そして、人々に戸惑いを与えている男の声がはっきりと聞こえてきた。 「今こそ!ポケモン達を人間の手から解放すべきなのです!我々の元には既に、自らの意思で解放を望む多くのポケモンが集まっています」 「嘘だ!」 男の演説を遮り、聴衆のひとりが叫んだ。 「お前達プラズマ団は"解放"と俺達の仲間をそそのかして、戦争の兵器として使っているんだろう!」 しかし男は特に動揺する様子もなく、むしろその顔に笑みを貼り付けた。 「ほう、貴方は"そちら側"のポケモンですね。いいでしょう、何とでもお言いなさい。貴方もいずれわかりますよ、我々の言っていることが正しいのだと、ね」 では、と男が一礼をすると、周りにいた彼の同士が取り囲むようにして広場から去っていった。 広場には、戸惑いだけが残されていた。 彼らは状況が読めぬまま呆然としていたが、やがて動いたのはアスナだった。 素早く辺りを見回し、そして目的の人物を見つけて走り出す。 「ねぇ、ちょっとおにーさん!」 彼女が呼び止めたのは、先程演説に対して反論をした男だった。 彼は悔しそうに男が去って行った方を睨みつけていたが、アスナの呼びかけに気付いて振り返る。 「……君は?」 「あのさ!おにーさんって、ポケモンなのか?」 突然のことに戸惑いを見せる男に、アスナは単刀直入に疑問をぶつける。 「おい、待てよアスナ!ああもう、すみません急に」 彼女を追いかけてきたカインは、突然の非礼を男に詫びる。 彼は数回瞬きをし、目の前の2人に敵意がないのを悟ると苦笑した。 |