2 にやり、と彼女は口の端を片方上げた。 何かをよからぬことを思いついたときの、嫌な笑い。 そろりと一歩目標の彼に近づき、そして。 「……わっ!」 「うわっ?!」 すっかり考え込むことに没頭したマガツの耳元で、突然大声を出す。 驚いたマガツは、びくりと大きく肩を震わせた。 「うっわ、悪ィ。そこまで驚くとは思わなかったんだ、」 「……いや、こっちこそ悪かった。少し気になることがあったからな」 彼の言葉に、2人は首を傾げる。 「気になること?」 「うむ。このセカイは、もしかしたら…………いや、まだ確信が持てない以上、お前たちは聞くべきではない」 マガツの答えに2人は納得していないようだったが、意外にも顔を見合わせただけで、それ以上はなにも言うことはなかった。 しばらくの沈黙。 しかし、それを破ったのはやはりアスナだった。 「……なあ!で、わたしらはこれからどうすりゃいいんだよ?」 「そうだな……まず、君達の友人とこのセカイの管理人を探す。おとなしくそれで話が収まればよし、そうでなければ……、」 一度そこで言葉を切り、2人の反応を伺う。 彼らは小さく頷いた。 「そうでなければ、正直どうすればいいか全く予想がつかん……が、厄介なことにはなるだろうな」 「じゃあさ、マガツ」 ふと、カインが口を開く。 「マガツは今、ユイコがどこにいるかわかるのか?」 少し以上の期待が込もった声。 しかしマガツは、首を横に振る。 「いや……皆目見当もつかん」 その答えに、2人は目に見えて落胆の色を示した。 「なんだよ、マガツ。管理人なんだろ」 アスナにいたっては、悪態までつく始末である。 しかしマガツは、いいか、と真剣な目で彼女を見つめる。 「勘違いしてもらっては困る。私はあくまでも君達がいたイッシュ地方の管理人だ。その中でならある程度の融通がきくが、ここはまったく違うセカイ。ここではそういったセカイに関することはできん」 彼らの落胆の色が、少し濃くなった。 つまり、マガツの力に頼れない以上は自分達でユイコを探さなければならない。 しかしイッシュ地方と一口に言っても、1日や2日で回れるような広さではない。 ましてや、どこにいるかわからない相手を探すなど、不可能に近く思えてくる。 2人が肩を落とした、そのときだった。 |