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「……そうだ!博士、マガツも待ってるし、私らそろそろ行くよ」

「そうだな、早く行かないと……ユイコのいるセカイがどんな状態なのかもわからないしな」

それぞれパートナーとなるポケモンを受け取りしばらく談笑していたが、やがて思い出したように立ち上がる。
アララギはそんな2人を見て、頷いた。

「……今更私は行くな、とは言わない。だけど、ふたつだけ言わせて欲しいの」

まっすぐ交互に、アララギはひたりと彼らの瞳を見つめる。

「ひとつは、無茶はしないこと。もうひとつは、3人で無事に帰ってくること……いいわね?」

2人はそれを受け、しっかりと頷く。

「当たり前だろ、博士!ぜってーユイコ連れて帰ってくるよ!」

「博士、すみませんがあとのことは……、」

「ええ、任せて。キミたちのご両親にはうまく説明しておくわ」

アララギの返事を聞くと、彼らは安心したように息をつく。

「あと、これも持って行くといいわ。きっと役に立つから」

アララギが手渡したのは、モンスターボールや傷薬。
どれも旅には欠かせないものだ。

「ありがとう、博士!」

「ありがとうございます!じゃあ、行ってきます」

「いってらっしゃい!いい、くれぐれも気をつけるのよ!」

「うん、行ってきます!」

行こう、とそれぞれのパートナーを促し、彼らは研究所を飛び出した。

研究所からそう遠くない広場に走って戻れば、先程と同じようにマガツがくたびれたスーツ姿でベンチに腰掛けていた。

「ごめーん、お待たせーっ!」

「遅いぞ、てっきり気が変わって来ないものかと思ったじゃないか……ん?パートナーをもらったのか?」

「うん、博士んとこ行ってきたんだ。なぁ、早くユイコのいるセカイへ行こうぜ!」

早く早くと足踏みするアスナを、まあ待てと制し、マガツは立ち上がって埃を払う仕種をしてから2人をじっと見据える。

「最後にもう一度だけ念を押しておく。向こうで何が起こっているかは行ってみなければわからないし、一度向こうに行けばそう簡単には帰って来れない。それでもいいな?」

しかし、彼らの覚悟は揺らがない。

「言ったっしょ、マガツ。ユイコに会えないのがもっと嫌だって」

アスナの明快な返事に、マガツは「うむ」と大きく頷いた。

「よし、ならば"向こうのイッシュ"へと行こう」




ぱちん、とマガツが指を鳴らすとその空間は切り取られ……広場には、誰も残っていなかった。

彼らの旅立ちを見た者は、いなかった。


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