4 「ハーイ、お待たせー」 程なくして戻ってきたアララギの手には、箱があった。 飾り気なくいたってシンプルなその箱に、2人の目が吸い寄せられる。 「博士、それ何?」 特にアスナは好奇心を隠し切れずにぐっと身を乗り出す。 そんな彼女を見て、アララギはふふと笑った。 「ホントはユイコにも選んでもらいたかったんだけどね……キミたちの、パートナーになる子たちよ」 そう言って箱の蓋を開けると、中にはモンスターボールが3つ並んでいた。 「冒険に出るならパートナーは大切よ。それに、知らないところへ行くのなら尚更ね。この子たちは、きっとキミたちの力になってくれるわ」 言いながら、ボールから中にいるポケモンを順番に出していく。 赤、青、緑の3色がちょこんと並んだ。 「博士、ホントにもらってもいいの?」 「ええ、この子たちはキミたちと冒険に出るのをずっと待ってたのよ」 うんうん、と頷いてはいるが、アララギの話はまるで耳に入っていない様子だ。 2人とも、すっかり目の前のパートナー候補たちに目を奪われている。 歳相応というには少しばかり幼いその反応に、アララギは苦笑を漏らす。 じっと目の前の小さな生き物に目を奪われていた彼らだったが、やがてぴたりと視線を定めた。 「博士、わたし、この子がいい!」 そう言ってアスナが抱き抱えたのは、白と水色のつぶらな瞳をしたポケモン。 「オーケィ、アスナはミジュマルにするのね?その子、ちょっと寂しがりだからあんまり一人にしないであげてね」 「うん、よろしくなミジュマル!」 彼女の腕に抱かれたミジュマルは一瞬びくりと肩を震わせたが、その笑顔が自分に向けられたものだとわかると、嬉しそうに『ミジュ』と鳴いた。 「さて……と。カインはどうする?」 「あ、俺は……、」 そう言ってカインは鮮やかな緑のポケモンを手にしようとした、そのとき。 『ポカ!』 どん、と赤いポケモンが緑のポケモンに体当たりをし、押しのけるようにしてカインの正面に立った。 その瞳はじっとカインに熱い視線を送っている。 そんな彼らの様子を見てアララギは苦笑し、アスナは声をあげて笑った。 「あらら、この子……ポカブはカインのこと気に入ったみたいね。カインさえよければだけど、せっかくだしこの子はどう?」 「あっはは!よかったじゃんカイン!熱烈ラブコール!」 そう言って笑うアスナを小さく睨みつけ、カインは改めて赤いポケモン……ポカブを見る。 ポカブもじっとカインを見つめ続ける。 ――そして。 「うん、よろしくな。ポカブ」 そう言って、その腕にポカブを抱える。 カインの腕の中で、ポカブは嬉しそうに鼻を鳴らした。 「ありがとう、カイン!彼女も喜んでるわ」 「彼女?」 アララギの言葉に、カインは首を傾げる。 「ええ、そのポカブ。女の子よ。だから、さっきアスナの言ったラブコールもあながち間違いではないかもね」 いたずらっぽく笑うアララギに、アスナは一層声を大きくして笑った。 「ぷっは!よかったじゃんカイン!」 今度はしっかりとアスナを睨みつけたが、やはりそれくらいで怯むアスナではない。 笑い続けるアスナはもう無視することにして、彼は腕の中のパートナーに言った。 「よろしくな」 もちろんだ、と言わんばかりに、再びポカブは鼻を鳴らした。 |