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「ハーイ、お待たせー」

程なくして戻ってきたアララギの手には、箱があった。
飾り気なくいたってシンプルなその箱に、2人の目が吸い寄せられる。

「博士、それ何?」

特にアスナは好奇心を隠し切れずにぐっと身を乗り出す。
そんな彼女を見て、アララギはふふと笑った。

「ホントはユイコにも選んでもらいたかったんだけどね……キミたちの、パートナーになる子たちよ」

そう言って箱の蓋を開けると、中にはモンスターボールが3つ並んでいた。

「冒険に出るならパートナーは大切よ。それに、知らないところへ行くのなら尚更ね。この子たちは、きっとキミたちの力になってくれるわ」

言いながら、ボールから中にいるポケモンを順番に出していく。
赤、青、緑の3色がちょこんと並んだ。

「博士、ホントにもらってもいいの?」

「ええ、この子たちはキミたちと冒険に出るのをずっと待ってたのよ」

うんうん、と頷いてはいるが、アララギの話はまるで耳に入っていない様子だ。
2人とも、すっかり目の前のパートナー候補たちに目を奪われている。
歳相応というには少しばかり幼いその反応に、アララギは苦笑を漏らす。

じっと目の前の小さな生き物に目を奪われていた彼らだったが、やがてぴたりと視線を定めた。

「博士、わたし、この子がいい!」

そう言ってアスナが抱き抱えたのは、白と水色のつぶらな瞳をしたポケモン。

「オーケィ、アスナはミジュマルにするのね?その子、ちょっと寂しがりだからあんまり一人にしないであげてね」

「うん、よろしくなミジュマル!」

彼女の腕に抱かれたミジュマルは一瞬びくりと肩を震わせたが、その笑顔が自分に向けられたものだとわかると、嬉しそうに『ミジュ』と鳴いた。

「さて……と。カインはどうする?」

「あ、俺は……、」

そう言ってカインは鮮やかな緑のポケモンを手にしようとした、そのとき。

『ポカ!』

どん、と赤いポケモンが緑のポケモンに体当たりをし、押しのけるようにしてカインの正面に立った。
その瞳はじっとカインに熱い視線を送っている。

そんな彼らの様子を見てアララギは苦笑し、アスナは声をあげて笑った。

「あらら、この子……ポカブはカインのこと気に入ったみたいね。カインさえよければだけど、せっかくだしこの子はどう?」

「あっはは!よかったじゃんカイン!熱烈ラブコール!」

そう言って笑うアスナを小さく睨みつけ、カインは改めて赤いポケモン……ポカブを見る。
ポカブもじっとカインを見つめ続ける。

――そして。

「うん、よろしくな。ポカブ」

そう言って、その腕にポカブを抱える。
カインの腕の中で、ポカブは嬉しそうに鼻を鳴らした。

「ありがとう、カイン!彼女も喜んでるわ」

「彼女?」

アララギの言葉に、カインは首を傾げる。

「ええ、そのポカブ。女の子よ。だから、さっきアスナの言ったラブコールもあながち間違いではないかもね」

いたずらっぽく笑うアララギに、アスナは一層声を大きくして笑った。

「ぷっは!よかったじゃんカイン!」

今度はしっかりとアスナを睨みつけたが、やはりそれくらいで怯むアスナではない。
笑い続けるアスナはもう無視することにして、彼は腕の中のパートナーに言った。

「よろしくな」

もちろんだ、と言わんばかりに、再びポカブは鼻を鳴らした。


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