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「でも2人とも、」

2人が落ち着いたのを見計らい、アララギは先程から抱いていた疑問を切り出した。

「私はキミたちの話を信じる。……でも、そんな話、一体誰から聞いたの?」

彼女がそう思うのも当然で、裏付けがなければ信じたくてもやはり子供の作り話だと思ってしまう。

彼らもそれは十分承知だ。
承知だからこそ、顔を見合わせ、戸惑う。
"もうひとつのイッシュ"があることすら、どう説明していいかわからなかったし、信じてもらえるかもわからなかったのだ。

ましてや、伝説上のポケモンだと思われていたゼクロムが実在し、彼が人の姿をとるなど、自分達だってまだ夢ではないかと疑っているくらいだ。
でも、ここまで話してしまったのだから、もう引き下がれない。

「博士……多分、さっき以上に信じられないと思う。けど、本当なんだ」

そう前置いて、カインは小さく息を吐く。

「いいわ、話してみなさい?」

彼女の言葉に、カインは頷き……そして、

「……ゼクロム」

そう、短く答えた。
たちまちアララギの表情は、驚きに彩られる。

「ゼク……ロム?まさか、あの伝説の、」

彼らは小さく、しかししっかりと頷いた。

「わたしら、さっき広場でマガツっていうくたびれた変なオッサンに会ったんだ。そしたら、そのオッサンがゼクロムで、」

「ま……待ってアスナ、話が繋がらないわ。順序立てて話してちょうだい」

早口でまくし立てるアスナの説明に、アララギは制止をかける。
その様子を見たカインは、呆れたように溜息をついた。

「……ったく、俺が説明するからアスナは黙ってろよ」

だって、とアスナは口を尖らせるが、彼以上にうまく説明する自信はないのか、それ以上は何も言わなかった。
しかし、当のカインもどこから説明したものかとしばらく考え込み、そして。

「博士……基本的には、さっきアスナが言った通りで概ね合ってるんだ。俺たち、ユイコの家に行ったあと広場に行ったんだ」

先程の出来事を思い出しながら、ゆっくりと話す。

「広場にはアスナが言ったみたいなオッサンがいて、俺らに言ったんだ。LDSを治せるかもしれない……って」

アララギは驚きで小さく目を見開く。

「そんな……さっきの話だと、LDSの患者は他のセカイへ行ってしまうんでしょう?それをどうやって、」

「それが、そのオッサン……マガツは、今俺たちがいるこのセカイの"管理人"なんだ。"管理人"なら、何とかできるかもしれない……って、」

「"管理人"?」

「俺もまだよくわからないんだけど……このセカイが、間違った方向に進まないように、見守り導く存在……らしいんだ」

そう言ったカインの表情も、アララギやアスナと同じく、頼りなさげに眉が下がっていた。


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