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「そういえばセルディアさん、さっきから私のイッシュって……なんだか、ここがセルディアさんのものみたいな言い方」

「ええ、そうよ。だってここは私のイッシュ地方……私が管理するイッシュ地方ですから」

ユイコにしたら何気ない感想のつもりだったのだろうが、セルディアから返ってきた返事は彼女を驚かせるには十分すぎるものだった。
瞬きを数回繰り返し、やっと彼女が発した言葉は、

「えっとぉ……、つまり、女王様?」

という、なんとも間の抜けたものだった。

「――いいえ、女王……つまり、統治者というのは正しくありません。私たちは"管理人"といいます」

「管理人?」

耳慣れない単語に、ユイコは首を傾げた。

「そう、管理人。このセカイが間違った道に進まぬよう、導く存在」

「うーんと……よくわかんないけど、神様みたいな?」

「そうですね……女王よりはそちらの方が、より近いかもしれませんね」

正しくはありませんが、と補足を忘れずに。
ふぅん、とユイコは唸ったが、果たして理解しているのかどうかは読み取れない。
しかし間もなく、ふとユイコは何かを思い付いたように顔を上げた。

「でも、セルディアさんが……その、管理人?なら、なんでセルディアさんがやらないの?」

ただ純粋なその問いに。
はらはらとセルディアは涙を流す。

「……遅かったのです。気付いたときには、もう……急激に私の手を離れたセカイには、干渉できないんです」

曰く、そのプラズマ団という組織は"本来存在しないはずの"組織なのだという。
そのため、セルディアが異変に気付いたときには既に取り返しのつかないところまで事態は進んでしまったのだ、と。

「それを元に戻すのは、このセカイとは違うセカイから来た者しかできないのです……だから、」

セルディアはひたりとユイコを見つめる。

「どうか……どうか、お願いします。私の……このセカイを元に戻す手助けを、してください」

ユイコはしばしの間うーんと唸っていたが、やがてへらりと笑って言った。

「まぁ……元々冒険に出るつもりだったし、これはこれでいいかもー」

そのあまりにあっけらかんとした答えにセルディアは脱力感を覚えたが、案外これくらいの方がいいのかもしれない。
そう思い直し、セルディアはユイコの手を取った。

「ありがとうございます……!早速で申し訳ないのですが、早くここを離れましょう。今は何もありませんが、ここはまだ戦場です」

「でも、どこに?」

セルディアが指先で簡単な動作をすると、白の空間が口を開く。

「……協力者がいます。まずはその者のところへ行きましょう。あなたはポケモンも連れていないでしょう?」

そういった身仕度も含めて、とセルディアは言った。
そして、二人は開かれた空間に吸い込まれた。





轟音と共に何かが飛んでいく音がした。
次の瞬間、ごう、と辺りを炎が覆い尽くす。


さあ、戦争のハジマリだ。


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テーマ「人外ファンタジー」
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