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「あのぉ……、もしあたしが嫌だって言ったら……どうなるんですか?」

ユイコの問いに。
セルディアの表情が凍り付いた。

「……このまま争いが続けば、やがては荒廃し……残念ながら滅んでしまうでしょう」

その重い事実に、ぐっと息を飲む……が、ほどなくして彼女の表情に変化がみられた。

「一度……その"もうひとつのイッシュ地方"を見せてもらえませんか?」

その声には、何かを決意した色があった。
思いもしなかった申し出にセルディアは小さく目を見開いたが、何かを感じ取ったのだろう。
小さく頷いた。

「……いいでしょう。その方があなたにもよりこの危機をわかっていただけるでしょうから」

目を瞑りなさい、というセルディアの言葉に従い、ユイコは瞼を落とす。
その瞬間、何が起こったのか彼女はしらない。
一瞬にして白に包まれていた景色は消え去り、"もうひとつの"イッシュの景色が顔を出す。

「……もう、いいですよ」

ゆっくりとユイコは目を開く。
彼女の目に飛び込んできたのは、

「え……ここ、」

彼女は記憶を手繰る。
この景色を、彼女は知っている。

「夢で戦争してたとこだ……」

つい先日みた夢で見た景色と、まったく同じだった。
草木が燃やされ、大地が抉られた痕がぽっかりと口を開けている。
文明が発達していた形跡はあるが、もうそれは過去のものとなってしまっている。
瓦礫の山が、そこかしこに積み上がっている。

「この方が……あなたに、より危機を理解していただけると思いましたから」

「え……まって!あれは夢じゃないの?!」

「現実です。このセカイにおいては……ですが」

「えっとぉー……もうちょっと、回転数落としてくれると嬉しいかなぁ、とか思ってみたり」

ユイコは微妙な笑いを浮かべる。
にわかには受け入れがたい事実。

セルディアはすっと右手奥の方を指した。

「あなたが敵に攻撃を受けたのは、あのあたりでしょう?」

ユイコが指された方に視線を移すと、確かにあんな景色だった気がする。

「……ここは、ブラックシティ。このイッシュ地方で、もっとも発展していた都市でした」

ユイコは聞き覚えのない都市の名前に首を傾げた。

「ブラックシティ……?待って、イッシュ地方にそんな街ないよ?」

……少なくとも、彼女が知る範囲では。

「だから言ったでしょう、あなたのいたイッシュとは違う……と。ここは私のイッシュです」

うーん、とユイコは大きく唸った。


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