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「あ、お姉さん。やっぱり暗い表情じゃない方がいいわ」

クスクスとユイコは笑う。
つられて女も、小さく笑った。

「不思議な子ね……」

「あは、よく言われます……って、そうそう。お姉さん、ここどこですか?」

すると、一瞬和んだ空気もどこへやら。
女は再び顔に影を落とす。

「ここは……そうですね、あなたの感覚に合わせるのなら……"もうひとつのイッシュ地方"」

「もうひとつの……?」

疑問符をつけて反復する。
よく飲み込めないらしい。

「申し遅れましたが、私の名前はセルディア。そして、この世界の者には……」

女……セルディアがそこで一度そこで言葉を切ると。

「うわぁ……、」

『……レシラム、とも呼ばれています』

セルディアがいた場所にいるのは、白く神々しく輝くドラゴンの姿。
ぽかんとその姿を見上げるユイコを見て、セルディアは少し身を屈めた。

『驚きまし、』

「すっごい!ねぇ、セルディアさん今の何?!」

ユイコの目はきらきらと輝いている。

「あれ……でも、その姿ってセルディアさんはポケモン?でもさっき……、」

するとセルディアを淡い光が包み、そこには先程の女がいた。
一歩、セルディアはユイコに近付く。

「今のは擬人化……といいます。あなたのいたイッシュ地方ではポケモンは擬人化をすることはありませんが、"もうひとつの"イッシュ地方ではそう珍しいことでもありません。いえ、むしろ擬人化をしないと共存することが難しいのです」

「うーんと……よく、わかんないんですけどー……とりあえず、あたしは今別の世界にいるってこと?」

セルディアは静かに頷く。
するとユイコはがくりと肩を落として顔に手を当てた。

「あちゃー…じゃあ今晩のドラマ観れないわぁ。楽しみにしてたのになぁ、」

あまりに予想外のユイコの言葉に、セルディアはまたも目を丸くする。

「ドラ……マ?」

「そう、ドラマ。今日は好きな人が出るから楽しみにしてたの」

「それは……何と言うか、すみませんでした……」

セルディアはくらりと立ちくらみがした。
本当にこの子で大丈夫かしら、と小さく口の中で呟く。
しかし、もう後戻りはできないのだ。

「……あれ?すみませんってことは、セルディアさんがあたしをここに連れてきたの?いつ?」

ここに来たことはもちろん、セルディアに会ったのもたった今。
ユイコの頭の中を、疑問符が駆け巡る。

「それには……少し長い話になります」

そしてセルディアは、口を開いた。


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