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「夢?」

『そうだ。一部例外はあるが、夢の中で起こったこと…その多くは、他のセカイで実際に起こったことなのだ』

まさか、そんな。
アスナとカインは、互いに顔を見合わせる。

『…まあ、にわかには信じられないのも無理はない。とりあえず先に進めるぞ。つまり君たちは、眠ることで他のセカイへ行く。その場合は、何も心配することはない』

マガツはそこで一度言葉を切り、2人の反応を窺う。
アスナは先程同様ちんぷんかんぷんそうだったが、カインは何度も反復し、何とか理解はしたようだ。

『…続けるぞ。通常通り眠った場合は問題ない。しかし自らの意思で眠るのではなく、何者かによって無理矢理他のセカイに連れ去られた場合。これがLDSとなる』

マガツによって告げられたその事実に、2人は目を見開く。

「え…待って、待ってよ。つまり、」

「ユイコは何者かによって、他のセカイに連れ去られたってことか?」

マガツはゆっくりと頷く。

『そして、そんなことができるのは、私達のような"管理人"だけだ』

「そうだ、さっきも広場で言ってたけどその"管理人"って何なんだ?」

『平たく言えば、このセカイを管理する者だ』

「…平たすぎてわかんないよ」

はぁ、とカインは溜息ひとつ。

『つまり…だ。このセカイが間違った方向に進まないよう、見守り、導く存在だ』

「このセカイを支配してるってことか?」

しかしアスナの問いに、マガツは首を振る。

『支配とは違う。君達は支配されるような圧力を感じたことはないだろう?』

しばしの沈黙。
しかしそれは、何よりの肯定。

「マガツが何者かも、LDSの原因もとりあえずわかった。じゃあ、ユイコを助けるにはどうしたらいいんだ?」

カインの言葉に、マガツはひとつ咳ばらいをして、言った。

『君達が彼女の連れ去られたセカイへ行き、彼女を連れ戻すのだ』

「わたしら、が?」

「そのセカイっていくつもあるんだろ?どのセカイか、マガツはわかるのか?」

『確証はない。しかし、最近急激に荒れ始めたセカイがあるから、恐らくはそこだろう』

マガツはそこで2人を見据え、言った。

『君達に改めて聞こう。彼女…ユイコを助けに行く覚悟はあるか?』

突然突き付けられた選択肢。
アスナもカインも、戸惑いを隠せない。
…それでも、

「マガツ…わたし、行くよ」

「アスナ?!」

『君達の安全は保証しかねる。それでも行くというのか?』

マガツの問いに、アスナは一瞬躊躇う。
それでも、

「うん。だって、ユイコにもう会えないなんて、嫌だもん」


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