6 「夢?」 『そうだ。一部例外はあるが、夢の中で起こったこと…その多くは、他のセカイで実際に起こったことなのだ』 まさか、そんな。 アスナとカインは、互いに顔を見合わせる。 『…まあ、にわかには信じられないのも無理はない。とりあえず先に進めるぞ。つまり君たちは、眠ることで他のセカイへ行く。その場合は、何も心配することはない』 マガツはそこで一度言葉を切り、2人の反応を窺う。 アスナは先程同様ちんぷんかんぷんそうだったが、カインは何度も反復し、何とか理解はしたようだ。 『…続けるぞ。通常通り眠った場合は問題ない。しかし自らの意思で眠るのではなく、何者かによって無理矢理他のセカイに連れ去られた場合。これがLDSとなる』 マガツによって告げられたその事実に、2人は目を見開く。 「え…待って、待ってよ。つまり、」 「ユイコは何者かによって、他のセカイに連れ去られたってことか?」 マガツはゆっくりと頷く。 『そして、そんなことができるのは、私達のような"管理人"だけだ』 「そうだ、さっきも広場で言ってたけどその"管理人"って何なんだ?」 『平たく言えば、このセカイを管理する者だ』 「…平たすぎてわかんないよ」 はぁ、とカインは溜息ひとつ。 『つまり…だ。このセカイが間違った方向に進まないよう、見守り、導く存在だ』 「このセカイを支配してるってことか?」 しかしアスナの問いに、マガツは首を振る。 『支配とは違う。君達は支配されるような圧力を感じたことはないだろう?』 しばしの沈黙。 しかしそれは、何よりの肯定。 「マガツが何者かも、LDSの原因もとりあえずわかった。じゃあ、ユイコを助けるにはどうしたらいいんだ?」 カインの言葉に、マガツはひとつ咳ばらいをして、言った。 『君達が彼女の連れ去られたセカイへ行き、彼女を連れ戻すのだ』 「わたしら、が?」 「そのセカイっていくつもあるんだろ?どのセカイか、マガツはわかるのか?」 『確証はない。しかし、最近急激に荒れ始めたセカイがあるから、恐らくはそこだろう』 マガツはそこで2人を見据え、言った。 『君達に改めて聞こう。彼女…ユイコを助けに行く覚悟はあるか?』 突然突き付けられた選択肢。 アスナもカインも、戸惑いを隠せない。 …それでも、 「マガツ…わたし、行くよ」 「アスナ?!」 『君達の安全は保証しかねる。それでも行くというのか?』 マガツの問いに、アスナは一瞬躊躇う。 それでも、 「うん。だって、ユイコにもう会えないなんて、嫌だもん」 |