3 一夜明けて翌日。 広場には、昨日の彼らの姿はない。 代わりにそこに居たのは、くたびれたスーツを着た中年と呼ぶには若干早いであろう年頃の男性。 彼はベンチに腰掛けているが、特に何をしているわけでもない。 ただ時折、空を見上げては頭を掻いている。 そうしてどれくらいの時間が経っただろうか。 ふと彼が視線を戻すと、向こうから人影がやってくるのが見えた。 二人の少年少女は、昨日ここに居たアスナとカイン。 ユイコの姿は見えない。 しかし、そのアスナとカインの表情も、何やらうかない表情をしている。 二人は口数も少なく、男性の前を通り過ぎた…そのとき。 「獅子座のアナタ。今日からセカイが変わるかも…気をつけて」 「…あ、わたし、獅子座だ」 「馬鹿アスナ、こんなわけわからんオッサンの言葉に耳を傾けんなよ」 行こうぜ、とカインはアスナを促す。 が、その言葉に男性が勢いよく立ち上がる。 「オッサンとはなんだ、オッサンとは!これでも3つ引いて1の位を切り捨てたらまだハタチなんだ!」 「十分オッサンだよ」 「ええい、これだから最近の若いモンは…」 「そーいうところがオッサンなんだよ」 ぼそりとアスナが言う。しかし、その声には昨日のような覇気はない。 「む…そうか…」 男性は納得したのか、頭を掻きながら再びベンチに腰掛ける。 アスナとカインは不思議そうにその様子を眺めながらも、戸惑いを隠せないでいる。 「ほら、君たち。せっかくこんないい天気に広場へ来たんだ。恋人同士、仲睦まじく語り合うがいい」 「わたしら、別に恋人じゃないし」 「む…そうか。いやまあ、とにかく何かをしようとしてここへ来たんだろう?」 なら私に構わず続けるがいい、と男性は言う。 2人は言われるままに、男性が座っていた隣のベンチに腰掛ける。 「なあ、アスナ」 「なに、カイン…」 「……」 「……」 しかし言葉が続かず、沈黙が続く。 それはまるで、言い出しづらいことを言いかけて飲み込むような、そんな感覚。 「ふむ、どうやらお困りのようだね?」 見かねた男性は、再び彼女たちに声をかける。 「オッサンに言ったって、わかりゃしないよ」 「だーかーら、…まあいい。もしやその様子だと、誰か知り合いがLDSにかかったとかかね?」 男性の言葉に。 2人は、目を見開いた。 |