2 「ごめーん、ふたりともお待たせー」 原因不明の病気の存在に少し2人が声のトーンを落としたとき。 広場に、アッシュピンクの髪をしたひとりの少女が姿を表した。 「ユイコ、遅いよ!」 すると、さっきまでの陰はどこへやら。 アスナは遅れてきた少女…ユイコを一喝する。 しかしユイコはそれをさして気にするすうもなく、へらりと笑う。 「あのね、聞いて聞いてー。今日、アスナとカインが夢に出てきてさー」 「…!」 まさか。 ユイコのその言葉に、アスナとカインは顔を見合わせる。 「なぁ、ユイコ。その夢ってさ、なんか、戦争してる夢じゃなかったか?」 「そうそう!…あれ、なんでカインが知ってるの?」 その問いには、カインではなくアスナが答えた。 「わたしらもね、同じ夢をみたんだ」 「えー、うっそだぁ」 「嘘っぽいけど、本当だよ。その夢…ユイコは途中で戦争が嫌だって、武器を放り出して…で、敵の攻撃をくらっただろ?」 カインの言った通り、確かにそれはまぎれもなくユイコ自身がみた夢の内容と同じもの。 奇妙な偶然に、さすがのユイコも眉をしかめる。 「うーん…なんていうか、へんなの」 「だよな、3人揃って同じ夢をみるなんて」 「そういえばさ、ユイコ。ユイコはあのあと、やっぱり目が覚めたの?」 アスナの問いに、それがね、とユイコはおかしそうに笑い出した。 「あのあと、目が覚めて喉が渇いたから水を飲みに台所に行ったのよ。で、蛇口をひねったら水じゃなくてサイコソーダが出てくるのね」 「…は?」 「お、これはラッキーって思ってペットボトルに貯めておこうと思ったところで、目が覚めたの」 残念だったわー、とユイコ。 「えっと、つまり…二段夢オチ?」 「うん、そうそう」 にこにこと頷くユイコに、アスナとカインはため息をつく。 「ユイコらしいっていうか…もういいや、とりあえず買い物行こうぜ。帰って荷造りもしなきゃだろ」 「あ、そうだな。じゃあ、とりあえずショップ行こうか」 「うん!いよいよだな、わたしらちのトレーナーデビュー!」 そして彼らは、翌日待っている旅立ちのために動き出す。 この日が彼らの「日常」の最後だと知っているものは、誰もいない。 ただひとり、"彼女"を除いては。 |