1 「しっかしまあ、ここも変わんねーなぁ」 ――あれから。 無断で早朝から出て来たし、そろそろ一度フスベに戻ろうかとも思ったんだけど、果凜の 「せっかくだし、少しシロガネを見ていきたい」 との主張により、もう少しここに居座ることにしたのだ。 (ちなみにさっきイブキに電話したら、いくらあんたでも勝手に抜け出したら心配する……と、怒鳴られた。反省はしている。改める気はないが) (ちなみにもうフスベに戻る気はあんまりない。せっかくここまで来たんだから、カントーに行こうと思う) んで、果凜たちはといえば、和解してからというものキラの懐きっぷりが半端ない。 元々果凜のこと大好きだったみたいだし、まあ、当然といえばそうかもしんない。 (これが所謂"ツンデレ"というやつなのか。いや知らないけど) リアがドライなのは元々みたいだが、さっきからよく見ればあやめの近くにいる。やっぱり同じ種族同士、何か惹かれるものがあるんだろーか。 小夏はジョウトではあまり見ないポニータに興味を示して洞窟の外に走ってった。 とりあえず保護者に千速と龍妃をつけてるから多分大丈夫……だと思う。 ……そして、 「……おい、」 手頃な岩に腰掛けて足をぶらぶらさせてると、隣に気配が。 「何かね、まひる君」 「何考えてんだ?」 適当な岩を探して辺りを見渡したが見つからなかったようなので、立ったまま口を開く。 仕方ない、ちょっと横にずれてやろう。ついでにザックも足元に下ろしてやろう。 まひるはそれを一瞥すると、ちょっと広くなった岩に腰を下ろした。 「さあー。どうだろうねぇ?」 「さあー、じゃねーよ。あんた、俺にわからないと思ってる?」 じとり、とちくちくした視線が刺さる。痛い。 「いんにゃ、思わない。だから、言わない」 だって、まひるには隠し事なんてできないもん。 あたしが言わなくたって、全部お見通しなんだもん。 「だからってなぁ……"果凜が望めばここに置いてく"なんて大事なこと……本人にも言わねえつもりかよ」 ……そう。 さっきのやり取りを見て、あたしは一つの決意をした。 果凜がそれを望むなら、ここに残っても……ううん、残った方がいいかもしれない、って。 だからあたしは、さっきからここに座って果凜の様子を観察していたのだ。 「何で果凜に決めさせない?」 まひるの口調はあくまでも厳しい。 ……当然か。 「だってね、果凜は優しいから」 ちょっと気が短いけど、 ちょっと手も早いけど、 不器用だけど、果凜は優しい子だから。 「果凜は優しいから、自分の本当の気持ちに関係なく、あたしと来るって言うよ。……でも、それじゃダメ。果凜には果凜の道があるんだから……、」 「……っんだよ、それ!」 あたしの言葉は、その叫びに遮られた。 |