1 今日は朝から誰も見当たらない。 いつもの通り昼前まで寝て、気づけば部屋の中はあたし以外誰もいない。 おかしい。 千速が龍妃を連れてどっか行くのや、果凛がふらっと姿を消すのはもう日常だけど、まひるやあやめ、小夏まで見当たらないのは珍しい。 はて…? 「ちとせおねえちゃん!」 うっせーまひるもいないし二度寝でもするかなと布団にただいましたとき。 ちょこちょこと小夏が走ってきた。 相変わらず抱きしめたくなるくらい愛らしい。 「お。小夏おはよ」 「もうこんにちはだよ」 うん、まあ、そうとも言う。 太陽はほぼ真上。 起きるのにはいい頃合いかもしれない。 「まあ、いいや。小夏、まひるたちは?」 「えっとねー、まぁくんが…あ、ううん、ちがうよ!こなつ、しらないよ!」 …? 怪しい。 「小夏、小夏」 ちょいちょいと手招きすれば、小夏は素直にそばまで寄ってくる。 (まひるにもこれくらいの素直さがあればいいんだけど) 「おやつ食べない?」 かばんの中から昨日作ったクッキーを取り出せば、小夏は途端に顔を輝かせる。 「たべる!」 「よーし、みんなには内緒だよ」 そう言ってクッキーを広げると、小夏はにこにこと手を伸ばす。 「小夏、おいしい?」 「うん、おいしいよ!」 百万ドルの笑顔ってこういうことを言うんだろうっていう笑みで、小夏は頷いた。 「そっかそっか、あたしも小夏に喜んでもらえてうれしいよ。ところで小夏、」 クッキーを口いっぱい頬張りながら(そんな仕草さえ愛らしい!)小夏は振り向いた。 「まひるたちはどこ行ったか知ってる?」 「コガネシティだよ!……あ、」 しまった、と小夏は口を押さえるけどもう遅い。 「ふぅん、コガネか…」 「ちがうよちとせおねえちゃん!まぁくんたちの場所なんて知らないよ!」 …まずい、やりすぎたか。 小夏は目に大粒の涙を浮かべている。 と、そのとき。 折あしくと言うべきか、部屋の扉が開かれた。 |