1 「さぁて、始まりましたシロガネ山の頂上決戦!挑戦者はニューラのキラ、迎え撃つはバンギラスの果凜。果たして、勝利はどちらの手に?!なお、ジャッジは千速、解説はまひる。そして実況はこのあたし、ちとせでお送りいたします!」 「……馬鹿言ってんな、誰が解説だ」 「っていうかオレがジャッジとか意味わかんねーよ!」 ……あたし的にはナイスな提案だと思ったんだけど。 まひると千速、双方から同時にツッコミが入った。なんでだ。 ……いやだってほら、まひるは逐一口うるせーし、千速なんだかんだで弱点少ねーからさ。 ってこっそり思ったら、まひるに思い切り睨まれた。ガッデム。 『ごちゃごちゃうっせーよ、纏めてくたばれよテメーら!』 言うが早いか、ひゅお、と冷たい風が吹き荒れた。 「おぉっと、いきなり出ましたキラの"凍える風"!効果は抜群、さて果凜は――?!」 視線をキラから果凜へと移せば、 「少しダメージを受けたようですが無事!不適な笑みを浮かべています果凜選手!……お?」 痺れるような冷気を振り払って、ずん、と一歩果凜が踏み出すと。 「おぉ、これは"砂起こし"!バンギラスの特性、砂起こしです!」 果凜がキラの方へ間を詰めれば、その周囲の砂や小石がカタカタと震え、そしてごう、と果凜を中心に荒れ狂う。 『……チィ!』 舌打ちひとつして、キラは大きく間合いを取る。 しかし、吹き荒れる砂からは逃れられずにびしびしと細かい砂が彼女を襲う。 うーん、ぶっちゃけあれきついんだよねー。地味に痛いっていうかさ。 ……と。 『ほらほらキラ、どーしたよ?そんなじゃいつまで経ってもあたしにゃ勝てねーよ!』 言って果凜が岩壁を蹴り上げると、ごろごろと岩壁は崩れてキラの頭上に降り注ぐ。 「これは果凜の岩雪崩!こちらも効果は抜群だが果たして――!」 「……なあ、ちとせ。聞いていいか」 あたしの熱の篭った中継に水を差したまひるは、ジト目であたしを見て言った。 「楽しいか?」 「…………んなこと聞かないでよ」 まひるも千速もノってくんねーし、なんだよあたし一人馬鹿みたいじゃないか。ちくしょ。 そう心中で抗議したとこで当然、まひるの白い目が返ってくるだけなのだが。 |