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「今日はこれくらいにしましょう。お疲れ様です、ちとせさん」

「ありがとうございました、先生」

…足が痺れる。
先生が帰るまでは我慢、我慢だけど…!

「あ、そうそう。ちとせさん」

あとちょっとで部屋から出ていくというところで、先生が振り返った。
(早く帰れ!)

「お母様が、お稽古が終わったら母屋に来るように、とのことですよ」

うげ、って漏れそうになるのを必死で堪えて、

「わかりました、先生。ありがとうございます」

では、と先生はやぁっと部屋から出ていった。

「っかー!生け花とかマジかったるい!」

着物の裾が乱れるのなんて知ったこっちゃない。
母様が母屋に呼ぶなんて、碌なこっちゃないんだよなー。
めんどくさいなー、バックレよっかなー。
でもそしたらあとがめんどくさいしな。

なーんて考えてると、部屋の隅に転がしてたモンスターボールが光り、見慣れたシルエットのエーフィが現れた。

『ちとせー、お前もうちょっと恥じらいとか持ったらどう?ぱんつ見えてるんだけど』

「おや、まひる。別にいいじゃないの、私のぱんつなんて毎日その辺に干してるじゃないのよ」

『そういう問題じゃねぇよ』

盛大に溜息を吐いて、まひるは前足で器用に私の着物の乱れた裾をなおしてくれる。

「かたじけないー」

『かたじけない、じゃ、ねぇよ。ほら、呼ばれてるんだから早く行けよ』

「うーん、もうちょっと」

『あんまり馬鹿やってると、あやめ呼んでくっぞ』

「ぎゃ!ごめん起きる行ってくるからあやめ呼ぶのはやめて怒られる」

まひるが小舅なら、あやめはお姉ちゃん。
あたしが頭の上がらない存在でもある。

「ったく…ほら、行ってきな」

いつの間にか擬人化していたまひるが扉を引いてくれる。

「はいはーい、いってきますよーっだ」

まひるの脇を擦り抜けるように廊下に出て、今度は何だろうとちょっと重い気分で母屋に向かった。


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