1 「っかー!いい湯だった!」 キキョウシティの中心部から少し外れた温泉街。 ハヤトさんが、キキョウの温泉は疲れをとるだけでなく美容にもいいって教えてくれたので、あたしたちは急遽温泉に入るためキキョウの外れまでやってきたのだ。 エンジュもいい温泉が多かったけど、キキョウもなかなか。 お昼の中途半端な時間にきたせいか、お風呂はガラガラで貸し切り状態。最高だ。 あたしがお風呂からあがると、龍妃はあんまり長風呂じゃないみたいで、すでに身仕度を終えていた。 「龍妃、早いねー」 「ああ、ちとせさん。上がったの。私には、ちょっと熱すぎたみたいで」 そう言った龍妃の体はほこほことほてっていて、なんだか艶かしい。 「やー、千速にはやっぱりもったいないよなぁ」 「え、何?いきなりどうしたの、ちとせさん」 「いやなに、千速の馬鹿に龍妃はもったいないってハナシー」 「あらやだ、あれで千速にもいいところあるのよ」 まーねー、と生返事をしながらがしがし頭を拭いていると、そっと新しいタオルで後ろから優しく包み込まれた。龍妃だ。 「ありがとー」 「どういたしまして」 ふかふかとしたタオルが気持ちいい。 髪を拭いてもらってうつらうつらしてると、なんだか騒がしくなった。 みんなもそろそろ上がったみたいだ。 「かりんちゃん、今度、こなつに水でっぽう教えてね」 「おー、任せろー」 「果凜、小夏。お風呂で遊ぶのはほどほどになさいな」 「べっつにいいじゃん、今日とか貸し切りだったんだしー?」 ニシシ、といたずらっぽく果凜が笑った。 と、思ったら、突然あたしと龍妃を見て、口を開いた。 「そーいやさ、さっき龍妃と千速の話してなかったか?」 「あー、うん。してたよ。聞こえてた?」 「うん、ちょうど風呂の入口ら辺で。そうだよ、ずっとあたし聞こうと思ってタイミング逃してたんだけどさ、龍妃、何で千速と付き合ってんの?」 「あれ…あ、そっか、果凜がうちに来たときにはもう龍妃たち付き合ってたっけね」 そー、と果凜が頷いた。 それが当たり前で、それが日常だったっけ。 「うーん…それにはあれだよね。千速がタッツーで、龍妃がミニリュウの頃からの話になるよね」 「やだちとせさん、今更話すの?」 「まーいいじゃん、せっかく野郎連中もいないし、ガールズトークしようぜ」 それは少し昔に遡る、小さな小さな初恋の物語。 |