1 「あのさー、まひる。張り切って家を出てきたはいいけど、」 「ん?なんだよ」 月明かりが照らす夜道をまひると2人、ぶらぶら歩きながらあたしは今直面する最大の問題を口にした。 「いやさ。出発は今日って決めたんだけど、あれだ。行き先決めてなかった」 「はぁあ?!」 あ、心底馬鹿にした目で見られた。 「馬鹿にしてんじゃない、呆れてものが言えないだけだ」 うぐ…! なんだよーこんなときだけ読心術使いやがって。 ともかく、なるべく早く…遅くても夜明けまでにはエンジュから離れないと。 かといって、いざ家を出たら行きたいところもこれといって見つからない。 「よし!」 そんなときは、これに限る。 「…何やってんだ、ちとせ」 「見てわからないかい、まひるくん。あみだくじだよ」 迷ったときにはあみだくじかジャンケンかその場のノリっていう、大昔からの不文律があるのよ。 「ねぇよ」 すかさずツッコミが入った。 いいもん、あたし負けない。 手厳しいツッコミに泣いてはいけない。女の涙は安くはないのよ。 気をとりなおして、あたしは完成したあみだくじからひとつ、右から2番目を選んで出発した。 あっみだっくじー あっみだっくじー とりあえず手近にジョウト各地の名前を地面に書き出して、ずりずり指でなぞってみる。 「…お。キキョウじゃん」 ぴたりとあみだくじが導いたのは、エンジュから程近いキキョウシティ。 「キキョウなら歩いて行けないこともない、けど…とりあえず、今日は早く離れないとだし、あやめに乗っけてもらおっかな」 ぶっちゃけ夜はしんどいし。 あやめだったら、夜でも安全運転だし。 そうと決まったら善は急げだ。 ボールからあやめを出そうとしたとき、背後からあたしたち以外の何かの気配がした。 |