1 「はい、注目ー!」 ぱんぱん、と手を叩くと、みんなの視線が一気に集まる。 「おい、ちとせ。お前熱出たばっかでその格好はやめとけ」 「え、いいじゃん。だって暑いし」 「いいじゃん、じゃねぇよ。目の毒だ」 まひるの言う"そんな格好"とは、キャミソールにぎりぎりまで短いパンツという、何とも夏を感じさせる格好。 季節を満喫するってスバラシイ。 「なぁにー欲情しちゃう?まひるってばセクハラー」 「だあほ!」 まひるの叱責にもめげず(あたしってば、なんてケナゲ!)、こほんと咳をひとつ。 気を取り直して、話を続けよう。 「昨日一晩つかって、あたしは考えた。旅に出ようと思います」 「「「「「「は?」」」」」」 おぉっ! 見事にハモって返すなんて、いいリアクション。 「だってね、このまま家で抵抗する方法なんて思い付かないし、ご飯とかで釣られて気付いたらお見合い会場でした、とかマジシャレになんないし」 「いやいや、エサに釣られるとか、今時野生のポケモンですらもうちょっと警戒心とかあるだろうよ」 「シャラップおだまり!果凜、千速にヘッドロックよろしく」 「はいよー」 ぱちんと指を鳴らせば、のっそり果凜が立ち上がって千速に狙いをつける。 「ぎゃ!悪い、悪かったちとせ!」 ぎりぎりと果凜の腕で頭を締められた千速(ざまみろ!)が助けを求めてるが、知ったこっちゃない。 「えー、千速のバカはほっといてー。他に何かある人ー?」 「でもよ、ちとせ」 さっきまで何か考える様子だったまひるが口を開いた。 「お前、料理とかできるワケ?家にいるみたいに、黙っててもメシが出て来るわけじゃねえぞ」 「ちっちっち。その辺は心配ご無用!龍妃ちゃんが料理はおろか家事全般、できるもんねー」 「人任せかよ!」 まひるのツッコミが、力いっぱい飛んだ。 |