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その頃は世界のすべてが大嫌いだった。



無意味に馴れ合う連中も、無駄に傷付けるニンゲンたちも。

クサって、やりきれねーで、何となくフラフラしてたらいつの間にか「シロガネの弾丸」なんて呼ばれて、取り巻きみてーなのもいて。
そいつら追っ払うのも面倒だから好きにさせてたら、いつの間にかアタマ張ってて。

でも、間違いなくあそこにいるのを心地よく感じてるあたしもいた。
なんだかんだ言って、あいつらは遠慮ってモンを知らない。
だから、あたしもサシで付き合える。

気付けば連中とシロガネ山をシメてて、好き勝手やってたところにあいつはやってきた。


シロガネ山ってのはちょっとくせ者揃いの連中ばっかりだから、人間どもも滅多には近付いて来ない。
……が、全く誰も来ねーわけじゃなくて、中にはあたしらを"討伐"だったり"捕獲"しに来た奴らだっていた。

当然、そんな連中には丁重にオモテナシしてとっとと帰ってもらうわけだけど。


あそこは、あたしらの"城"だったんだ。


最初はあいつも、そんな連中だと思ってた。
だけど、違った。

あいつはあたしに言ったんだ。

「あんたさぁ、寂しいの?」

あたしの言葉が通じるってだけでも驚いたのに、こともあろうかあたしにそう言いやがった。
あたしの右腕ですら、あたしにそんなこと面と向かって言ったことねぇのに。
何で、初対面の人間が。

『……バッカじゃねーの、お前』

呆れて追い返すのも忘れたのを、今でも思い出す。
そんなあたしの言を聞いてるんだかいないんだか、構わず続ける。

「寂しいんでしょ?ならさ、一緒に行こうよ」

『はぁ?ふざけんなテメェ、何であたしが人間なんかと一緒に……っ!』

ガツ、と岩を蹴り上げて睨みつけても、動じるどころかまるで見透かしたようにあたしを見上げる茶色の瞳。

「ね、行こうよ?」

怯えの色はなく、揺らがない。




――思えばあたしは。
このときから、ちとせに惹かれていたのかもしれない。


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