3 「手袋?」 ガサリと包みをほどくと、でてきたのは赤いミトンの手袋。 …でも、 「なんでまた急に」 今日は誕生日でもクリスマスでもない、何でもない日だったはずだけど。 するとまひるが小夏を指差し、言った。 「小夏がやるっつって聞かなかったんだよ」 小夏が? どーいうことだろう? すると小夏が「えへへ」と龍妃の陰から出て来る。 「あのね、今日は"きんろーかんさの日"なんだよ!」 まひるの「監査してどうすんだ」というツッコミが小さく入る、が、さすがにあたし相手のようではなく手加減してる。 「…ま、そゆこと。お前の格好、いい加減寒そうだし」 そういえば今も薄手の長袖にハーフパンツだ。 言われてみれば少し寒い。 「手袋ね、こなつが選んだんだよ!」 えへへと小夏がはにかむ。 「ちとせおねえちゃん、いつもありがとう」 他のみんなも、口には出さなくても表情がそれを物語っている。 いい子だ。いい子たちじゃないか。 「みんな、ありが…」 ありがとう、って言おうとしたら、キュウとお腹が鳴った。 そういえば、起きてからクッキーをちょっとつまんだだけだっけ。 「ほら、ちとせ。おあがりなさいな」 クスクスと笑いながらあやめが重箱の蓋を開いてくれる。 中にはおいしそうなおかずが並んでいる。 「紅葉の中のピクニックもなかなかでしょう」 「うん!」 あのね、あたしにとってはあんたたちが居ることがすごくうれしいんだよ。 あやめと龍妃の作ったお弁当を頬張りながら、こっそりそう思った。 「ところでさ、あたし厳密には働いてるわけじゃないんだよね。それでも勤労でいいのかな」 「あー…あ、ほらあれだ」 「?」 「職業ニートでいいんじゃね?」 「まひるテメェエエ!!」 あたしが投げた紙コップをまひるは軽く避ける。 目標を失った紙コップは、そのまままひるの向こうに居た千速にクリーンヒットした。合掌。 |