2 「おーい、ちとせ。起きてっか?」 入ってきたのは、千速。 後ろに龍妃も控えている。 千速はあたしと小夏を交互に見比べ、眉間にシワを寄せた。 「…何やらかしたんだ、ちとせ」 まあ、当然その疑いはあたしに向くわけで。 (事実ではあるのだが) 「いやまあ、その…」 さて、どうしたものか。 するとぐしゃぐしゃと小夏は顔を拭って、 「ちがうよちぃくん、ちとせおねえちゃんは何もしてないよ!」 「…?や、小夏がそう言うなら別にいいけどよ」 あまり腑に落ちない様子だったけど、とりあえず千速は引き下がる。 すると小夏はタタタっと走って龍妃にしがみつく。 「たつひちゃん、準備できた?」 「ええ、できたわ。…ほら、小夏ちゃん。鼻をかんで」 そう言って龍妃はまだ少しぐずつく小夏にハンカチを渡す。 ちん!といい音を立てて小夏は鼻をかむと、龍妃の手を引っ張る。 「あ、小夏ちゃん…!千速、ちとせさんをお願いね」 「おー。小夏、こけんなよー」 「だいじょうぶだよ!」 途端につまづいた。 言わんこっちゃない。 小夏と龍妃が出ていって、千速とふたり、取り残される。 「…で、何たくらんでんの?」 「さぁて、なんだろーな」 にやにやとした笑みと共に返事がかえってきた。 あとで絶対龍妃に言い付けてやる! 「まぁ、とにかくちょっと着いて来いよ」 なんだか少しシャクだけど、何があるのかはすごく気になる。 結局、あたしは身支度もそこそこに千速に連れられて部屋を出た。 紅葉が彩る鈴音の小道をさくさくと道を踏み分け、すずの塔の近くまでやってきた。 「どこ行くつもりよ、千速」 「んー、もうすぐだって…ほら、そこにみんないるだろが」 千速の指す方を見遣れば塔の下、少し広まったところにみんながいた。 「おせーよ、千速」 「うっせーよ果凜!ちとせに言えよ」 「ちとせ。そんなところに立ってないで、こっちにおいでなさいな」 「あ…うん、」 あやめに促されるまま、広げられたシートの上に座る。 「ねぇあやめ。あたしイマイチ把握できてないんだけど、紅葉狩りとかそーゆーことなの?」 「それもあるけど…まひる、」 「ほらよ、ちとせ」 ぱしっと投げられたそれをキャッチ。 それはピンクの紙包みだった。 |