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「おーい、ちとせ。起きてっか?」

入ってきたのは、千速。
後ろに龍妃も控えている。
千速はあたしと小夏を交互に見比べ、眉間にシワを寄せた。

「…何やらかしたんだ、ちとせ」

まあ、当然その疑いはあたしに向くわけで。
(事実ではあるのだが)

「いやまあ、その…」

さて、どうしたものか。
するとぐしゃぐしゃと小夏は顔を拭って、

「ちがうよちぃくん、ちとせおねえちゃんは何もしてないよ!」

「…?や、小夏がそう言うなら別にいいけどよ」

あまり腑に落ちない様子だったけど、とりあえず千速は引き下がる。
すると小夏はタタタっと走って龍妃にしがみつく。

「たつひちゃん、準備できた?」

「ええ、できたわ。…ほら、小夏ちゃん。鼻をかんで」

そう言って龍妃はまだ少しぐずつく小夏にハンカチを渡す。
ちん!といい音を立てて小夏は鼻をかむと、龍妃の手を引っ張る。

「あ、小夏ちゃん…!千速、ちとせさんをお願いね」

「おー。小夏、こけんなよー」

「だいじょうぶだよ!」

途端につまづいた。
言わんこっちゃない。

小夏と龍妃が出ていって、千速とふたり、取り残される。

「…で、何たくらんでんの?」

「さぁて、なんだろーな」

にやにやとした笑みと共に返事がかえってきた。
あとで絶対龍妃に言い付けてやる!

「まぁ、とにかくちょっと着いて来いよ」

なんだか少しシャクだけど、何があるのかはすごく気になる。
結局、あたしは身支度もそこそこに千速に連れられて部屋を出た。
紅葉が彩る鈴音の小道をさくさくと道を踏み分け、すずの塔の近くまでやってきた。

「どこ行くつもりよ、千速」

「んー、もうすぐだって…ほら、そこにみんないるだろが」

千速の指す方を見遣れば塔の下、少し広まったところにみんながいた。

「おせーよ、千速」

「うっせーよ果凜!ちとせに言えよ」

「ちとせ。そんなところに立ってないで、こっちにおいでなさいな」

「あ…うん、」

あやめに促されるまま、広げられたシートの上に座る。

「ねぇあやめ。あたしイマイチ把握できてないんだけど、紅葉狩りとかそーゆーことなの?」

「それもあるけど…まひる、」

「ほらよ、ちとせ」

ぱしっと投げられたそれをキャッチ。
それはピンクの紙包みだった。


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