星に願いを


7月7日、七夕。
織姫だか彦星だかが1年に1回だけ会えるらしい。
でも、それって辛くね?
オレは龍妃と1年も会えないとか絶対堪えらんねー。

「なー、まひる」

ベッドに寝転んで、大しておもしろくもなさそうに雑誌をめくってるまひるに話し掛ける。

「何、千速」

「お前、ちとせと1年会えなかったらどうするよ」

「清々する」

「あっそ」

…やめとこ、男2人でこんな話しててもむなしいだけだ。
龍妃だけじゃなくて、女連中はちとせの
「天の川見ながらガールズトークしようぜ!男子禁制な!」
と、いう発案により外出中。
(お前のどこがガールだと言いたい)

…本当は、オレが龍妃を誘いたかったっつーの。
別にちとせの突発的な行動なんて今更だから、どうこう言うつもりもねーけど。
やっぱり、ちょっとムカつく。

「前から思ってたけど、」

雑誌を放り投げ(飽きたらしい)、まひるが言った。

「お前、大概女々しいよな」

「うっせーほっとけー」

女々しいとか、そんなの言われなくたってわかってら。

「千速、さっきの質問だけど」

「あん?」

「七夕だろ?俺なら、会いたくなったら何してでも会いに行くよ。1年なんて、待たない」

そう言ってまひるは、不敵に笑った。


なんだ、そうじゃん。
簡単なことだ。
会えないんだったら会いに行けばいい。
龍妃に会うためだったら、どこまででも泳げる気だってする。


扉の向こうが騒がしくなった。
きっと、龍妃たちだ。
予想通り、部屋の扉が開く。

「いっやー、壮大壮大。ありゃ絶景だったわ」

「ほんと、あんなに綺麗に見れてよかったわ」

「まぁくんもちぃくんも来たらよかったのにー」

「それなら今からもっかい行って、千速に流星群でも降らせてもらうか?」

「お、果凜それナイスアイディア!」

「いやオレやらねーからな?あれ疲れるんだぞ?!」

いつも通りの無茶振り。
龍妃も横でクスクス笑ってる。

「なぁ、龍妃。帰ってきたばっかで悪いけどさ。ちょっと出かけね?」

「別にいいけど、どうしたの千速?」

「何でもない!ちとせ、オレちょっと龍妃と出かけてくっから!」

龍妃の手を取って閉まったばかりの扉に手をかける。

「ちぃくん!」

小夏に呼ばれて振り返ると、

「龍妃ちゃんをおそっちゃダメだよ、って果凜ちゃんが言ってるよ!」

「あ、バカ小夏あたしの名前出すなって」

「果凜、お前小夏に何教えてんだ!」

すると、龍妃がにっこり笑って言ったんだ。

「大丈夫よ、果凜さん。千速、私が困ることはしないもの」

オレを含めてぽかんとする一同を尻目に、「行きましょう、千速」とオレの手を取った。

やっぱり龍妃にゃ敵わないな、なんて。
満天の星空の下で、そう思った。

龍妃が願うなら流星群だって何だってするけど、オレの願いはただひとつ。

龍妃が幸せでありますように。

ただ、それだけ。










あとがき

久しぶりに糖度高いの書いた…!
本家はこれが標準ですがね(笑)
何がポイントかって、千速の願いは「一緒にいれますように」じゃなくて、「幸せでありますように」なんですよね。


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