7 「……あたしが、勝手を言ってるのはわかってる。でも、だからこそ……あたしの代わりに、お前らにここを守って欲しいんだよ」 「果凜……、」 ……確かに、果凜の言ってることもよくわかる。 果凜があたしのとこにいる以上、キラとリアがいなければ、さっきのヨーギラスたちみたいに小さくて非力な子たちはあっさり人間に狩り尽くされるだろうし、彼らの力を悪用だってされかねない。 人間にとっては不良のような果凜たちだったけど、ここに住むポケモンたちにとっては必要な存在だったんだ。 うーむ……別にあたし、悪いことした、わけじゃないけど。 ちょっち罪悪感を感じないでもない、かな。 あたしがあのときシロガネに行かなきゃ、果凜がここを離れることにはならなかったわけだし。 果凜の言葉にしばらく呆然としていたキラだったが、やがて顔を上げてじっと果凜を見据えた。 『……姉貴。また……帰って、くるよな?』 キラの言葉に、果凜は数回瞬きをしたあと、ニッと八重歯を覗かせた。 「当たり前だろ。あたしの帰る場所、ちゃんと守っとけよ」 果凜の返事にキラは目を見開き、そして。 『……おう!絶対帰って来いよな、姉貴!』 がつ、と嬉しそうにその拳を合わせた、そのとき。 「ちとせお姉ちゃーん!」 ざわ、と洞窟の入口の方が騒がしくなった。 振り向けば、一時避難させたヨーギラスたちをつれて、みんなが帰ってきた。 「無事に解決したみたいね」 「おうよ。サンキューあやめ」 ぱん、と軽くハイタッチ。 足元にいるヨーギラスたちは、まだちょっと不安そうにあたしとキラを交互に見てる。 『……お前ら、』 それに気付いたキラが一歩近付くと、ヨーギラスたちはびくりと振るえる。 しかしキラは、少し気まずそうに視線を泳がせたあと……照れ臭そうに、手を差し出して言った。 『その……悪かった、な』 彼女からの謝罪の言葉にヨーギラスたちは不思議そうに顔を見合わせていたが、やがてリーダー格だろう1匹が一歩前へ出て、その小さな手を差し出した。 『キラ姐、リア姐。あたいたち、果凜姐みたいになるのにまだ時間かかるかもしれない。でも、次はきっとあたいたちがシロガネを守るよ』 そしてその小さな手をしばらく見詰め……こつ、と彼女の爪を、その小さな手に重ねたのだった。 『……ばーか。お前らが姉貴みたくなるなんざ、まだまだ早ぇっつの』 そうは言ったものの、彼女の口元は笑っていて……案外この子ら、うまくやってけるんじゃないかなーって。 ふと、そんなことを思ったりしたのだった。 「これにて"一件着々"だね、ちとせお姉ちゃん!」 「……小夏。それを言うなら"一件落着"だろが」 自信満々言い切った小夏に、まひるが小さくツッコミを入れたのだった。 めでたし、めでたし。 |