6


「果凜、お疲れさん」

そう言って果凜の肩を叩けば、キラを抱えたまま果凜がゆっくり振り向いた。

「悪ィな、ちとせ。うちのごたごたに付き合わせちまって」

照れ臭そうに、果凜は笑った。

「いやなに、それは別にいいんだけどさー」

ちらりと果凜の腕の中……キラに視線を移せば、彼女は大きく目を見開いた。

『う……あ、……っと、』

じーっと無言でキラを見つめ続ければ、なにやら気まずそうに視線をあっちこちに泳がせて、そして果凜の肩に顔を隠した。

「ぷ……っ、はは!キラ、あたし怒ってない、怒ってない!」

そのあまりのギャップに思わず吹き出せば、ますます小さくなるキラ。

「お前相変わらずなのなー、キラ。変わってなくて逆に安心したわ」

……曰く。
果凜がシロガネにいた当時、一番果凜を慕っていたのがキラ……らしい。
そして、一番人見知りだったのも。

それが、彼女の支えと言っても過言ではない果凜がいなくなって、変な方向にブチ切れた……と、いうことらしい。



『……なぁ、姉貴!』

やがて落ち着いたんだろう、キラは顔を上げ、何かを決意したように果凜を呼んだ。

『あたし……、姉貴に着いていきたい!』

「!」

これには、さすがにあたしも驚いた。
確かにあたし、彼女が負けたらあたしたちについて来ること……とは言ったけど、まさか、キラの方からそう言ってくるなんてのは思ってなかった。

「うーん、あたしとしては別に構わないけどー。果凜、どうよ?」

もちろん即答で頷く……と思っていた、のだが。
少しの間考え込んでいた果凜は、やがて何かを決意したかのようにゆっくりと口を開いた。

「……そりゃ、あたしだってお前やリアが居てくれたら嬉しいさ」

『じゃあ……!』

果凜の言葉に顔を輝かせたキラだったが、しかし果凜は首を横に振る。

「……だけど、悪ィ。駄目だ」

『……っ!なん、でだよ……姉貴、』

まさかの果凜の返事に、ショックを隠せないキラが声を震わせる。

「そーだよ果凜。あたしは別にいいよキラが来てもさー」

なんでなんだろ。
せっかく、以前のように分かりあえたっていうのに。

すると、果凜は少し寂しそうに笑って言った。

「……お前やリアまでここからいなくなっちまったら、誰がここを守るんだよ」


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