4 『ほらほら、どうしたんだよ?!さっきのはクチだけか?!』 霰に紛れ込ませるように、彼女は氷のつぶてを投げ付ける。 ただでさえ果凛にとって相性の悪いその攻撃は、霰にまぎれて避けることが難しくなり、じわじわと果凛にダメージを与え続ける。 『……っち!』 果凛も応戦しようとしているものの、キラの方が素早さでは勝っている。 フットワークを効かせて一カ所に留まることなく、いろんな角度から氷のつぶてを投げ続けるから、なかなか攻撃に回ることができない……どころか、動きが鈍くなったようにも見える。 ……っていうか寒い!あたしまで寒い!! 腕をさすれば恐ろしいくらい鳥肌が立ってる。ガッデム。 「……おい、ちとせ」 「なに、まひる」 するとまひるはエーフィの姿に戻ると、あたしの腕へと飛び込んだ。 『これでちっとはマシだろ』 「うん、さんきゅ」 あー、まひるエーフィんときの手触りまじ最高。 んで、やっぱりあったかい。 ……ちょっと重いけど。 『……文句あるなら降りるけど』 「あぁああウソウソ冗談だっていや冗談じゃねーけど。あれだ、あたし座るから膝に乗ってよ」 一旦まひるを下ろして適当な岩場に腰掛ければ、膝の上に飛び乗ってきた。 「……っていうかちとせよぉ」 「なに、千速」 あたしのもふもふタイムを邪魔すんな。 「……いやさ、やべぇんじゃねーの?」 あれ、と千速が親指で指した方へ視線をやれば、 「あ…………果、凛っ!」 降り続ける霰のせいで、果凛の足が完全に止まってしまっていた。 そして、キラがそれを見逃すはずがない。 『……ふ、ははっ!じゃーな、シロガネの"弾丸"!くたばりやがれ!!』 そして冷気を纏った爪を振りかぶり……、 『……っ!』 来るべき攻撃を避けようとせず、果凜は自然体でキラを睨みつけ―― ――そして。 小さな砂時計なら流れ落ちてしまうくらいの時間が経過しても、彼女が動く気配はみられない。 冷気を纏った爪を振りかぶり、その切っ先を果凜に突き付けたまま……キラは、正面から果凜を睨みつけていた。 |