3


『……もう諦めろよ。お前じゃあたしには勝てねーよ』

岩の直撃を受けて地に臥すキラを見下ろしながら、果凜は口を開いた。

『お前の言いたいことはわかる。あたしがお前の立場でも、多分そうした。……だけど、これはあたしが決めたことなんだよ』

ぎり、とキラは果凜を睨みつけ、歯ぎしりをする……と。

「……およ?」

あれ……あたしの気のせいかな。

「どうしたんだよ、ちとせ?」

「ちょい待て千速。いや……うん。どう思う、まひる」

するとまひるは、おもしろくなさそうにふんと鼻を鳴らした。

「どうもこうもねーよ。お前の考えてる通りだよ」

……やっぱり。
あたしの考えてる通り……則ち、

「……千速。あんた気付かなかった?果凜の起こした砂嵐が、止んでることに」

――そう。
いつの間にか果凜を中心に渦巻いていた砂嵐はぴたりと止み、辺りを張り詰めたような冷気が包んでいる。
流石の馬鹿千速も、ひく、と顔が引き攣った。

「おいおい……これって、」

やべえんじゃねーの、と続けようとした、そのときだった。

こつ、と小さなかけらがあたしの頭に降ってきた。
そしてまたひとつ、今度は手の平に。
砂とは違い透明感のあるそれは、あたしの手の平ですぐに水へと姿を変える。

ぱらぱらとまばらに降り始めたそれは、次第に勢いを増していく。

『……ちっ!』

ばらばらと降り注ぐ霰は、果凜にじわじわとダメージを与える。

『ははっ!形勢逆転だなぁ?!』

屋外じゃないから本来ほど霰の勢いは強くないみたいだけど、それでも果凜にとってこれはあまりよろしくない。
よろしくない……が、あたしが手を出すのはそれ以上によろしくない。

「くっそー……もどかしい!」

あたしが仕掛けたとはいえ、やっぱり見てるだけというのは精神衛生上よろしく……

「なくても我慢しろよ」

「……へーい」

あたしの方を見ることもなくぐさりと釘を刺された。
読心術とかまじ反則じゃねーの。

……ともかく。
キラの言う通り、正しくこれは形勢逆転。
ばらばらと降りしきる霰の中での戦いは、はっきり言って果凜にはヒジョーに不利だ。
真っ白な視界の中では、小回りの利かない果凜じゃキラの攻撃にすぐに反応できないだろう。


嫌な汗を感じながら様子を見守ろうとした、そのとき。
キラが、動いた。


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