2 果凜の岩雪崩は、ギリギリのところでキラにかわされた……が、わずかに掠ったのか、キラは小さく舌打ちをする。 (ちなみに実況はやめた。だってまひるも千速もノってくんねーんだもん。っていうかぶっちゃけ飽きた) 『ほらほら、どうしたよキラ。大口叩いただけか?ああ?!』 そう吠えながら、果凜はガツガツ壁を蹴り、岩を落としていく。 ……ていうか、揺れるこれ超揺れるうぇえええ気持ち悪い……! 「……まひる、」 「何だよ」 「あとは……頼んだ」 あたしはもうダメだ、酔った。 果凜が岩壁を蹴り上げるたびに足元が揺れるんだけど、これがまた結構クる。 なんていうか、頭の中を思い切りシェイクされるみたいな。 あたし多分船とか乗ったらイッパツで船酔うんじゃないか。 (あ、でも波乗りは平気か) 「馬鹿言ってんじゃねーよ。……ほら、」 いつまでもぐらぐらしてるあたしの肩を掴んでぴたりと止めると、ザックから水筒を出してあたしに手渡す。 うあ、まじまひる出来た子。 さすがあたしの相棒。 そう思った瞬間飛んできたジト目を華麗にスルーして水を一口含めば、気持ち悪さは幾分和らいだ。 ……ここまでのところで、戦況は五分五分……いや、果凜がやや圧してるか。 でも、なんだろ。このキラの違和感……? まるで、力を制限してるような……、っ!! それは、一瞬の出来事だった。 キラの姿が掻き消えた。 標的を見失った果凜は、慌てて辺りを見回す。 違う、そこじゃなくて――! 「果凜、後ろ!!」 ……そう。 姿が消えたように見えたのは、キラのあの敏捷力を活かした"不意打ち"。 不意打ちで果凜の後ろに回り込んだキラは、その手を大きく振りかぶって、そして。 『さっさと……くたばれよ!』 がつ、と果凜の首筋に、手刀を打ち込んだ。 多分、あれは"瓦割り"……果凜にとって、サイアクの相性の技だ。 『ぐ……っ!』 「果凜!」 がく、と片膝をついて果凜は崩れ落ちる。 キラはその様子を、少し高い岩場から見下ろしている。 『ち……っ!何でお前みてーなやつを姉貴なんて呼んでたんだろーなぁ?』 ……ん? なんかキラ、少し遠い目をしてる……? まるでそれは"昔"を懐かしむような……、 『……はっ!知るかよ。お前らが勝手にそう呼んだんだろーが、よ!』 吐き捨てるようにそう言って立ち上がると果凜の足元がぐらぐらと揺れ、いくつもの岩がキラに襲い掛かる。 あれは……ストーンエッジ? 『くっそ……まだそんな体力残っ、……ぐっ!』 下から上へ吹き荒れるような岩を避けようとしていたキラに、岩のひとつが命中した。 空中でそのまま体勢を崩し、どさりと地面に落ちる。 |