5


そこに広がっていたのは、目を疑うような光景だった。

少し拓けた洞窟の壁はそこかしこが凍りつき、隅の方に追い詰められるようにヨーギラスの群が震えていた。
……多分、さっきの悲鳴もこのヨーギラスたちだ。
そして、

『あははは!いいザマだね!』

「果凜!!」

いつの間に元の姿に戻ったんだろう。
ヨーギラスを庇うようにして立ち塞がる果凜は……氷漬けに、されていた。

その様子を見て高笑いを上げるのは、ニューラ。

『……ちとせの姐御。こいつが、』

ゴルバットがふらふらとよろめきながら近付いてきた。
つまり、このニューラが……

「ねぇ、あんたが果凜のもうひとりの妹分、ってやつ?」

その鋭い爪を振り上げたまま、訝し気にあたしの方を見る。

『何者だい、アンタ……っても、聞くまでもないか。こいつのトレーナー、だろ?』

「まあね。ちょいと訂正するなら、トレーナーじゃなくて家族だよ」

するとニューラは不愉快そうに爪を下ろす。

『……家族だなんて反吐が出るようなこと言ってんじゃないよ。オレはそんな生温いのは、大嫌いなんだよ』

あー、いるいる。
こうやってぐれて斜めに構えているようなのがさ。
何か理由があるのかもしれないけど、生憎果凜に手を出された以上、今のあたしはそこを考慮してあげるほどの余裕はない。

「うーん、あんたが嫌いだろうと果凜があたしの家族に違いはないしねー。とりあえず一応確認すっけど、果凜氷漬けにしてくれたの、あんただよね?」

むかむかが込み上げてくるのを抑えて一応尋ねると、ニューラは、ふんと鼻を鳴らした。

『だったら?』

返ってきた返事は、間違いなく、黒。

「別に?こうするだけだよ。……千速!」

あたしの指示に、千速はめんどくさそうに溜息をつきながらキングドラへと姿を変える。

『オレ一応病み上がりなんだけど』

「うっさい千速、つべこべ言うな。熱湯で果凜の氷、解かしてやって!」

『オレあんまりこの技好きじゃないんだけど……っと!』

ぶちぶち文句垂れながらも千速が吐き出した熱湯は見事果凜に命中。
ゆるゆると氷が解けていく。

『てめぇ……!』

ぎり、と悔しそうにニューラはあたしと果凜を交互に睨む。

「おはよ、果凜」

『おー……サンキュ、ちとせ』

まるでいたずらが見つかった子供のように、ばつが悪そうに果凜は笑った。

『テメェ果凜、オレには何もなしかよ』

『なんだ、いたのか千速』

『お前なー、』

『ジョーダン。サンキュ、千速』

そして、果凜は。
視線をあたしたちからニューラへと移す。
その眼光は、今まで見るどの果凜よりも鋭い。


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