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こつ、こつ、とシロガネの洞窟に足音が響く。
果凜の隣にあたし、少し後ろにあやめとゴルバット。
そしてまひる以下全員、その後に続く。
あやめ以外は、みんな人の姿をとっている。
(多分、あやめが擬人化しないのは自分と同じ種族がいるからだろう)

「……あたし、さ」

ぽつり、と果凜が口を開く。
薄暗いせいで、表情は読みづらい。

「あんたに出会うまで、人間が大嫌いだった。……人間だけじゃない、人間がのさばってるこの世界も、だ」

「うん、知ってる」

だって出会ったあの日、あんなにも敵意を剥き出しにしてたんだもん。

「……でも、あんたが来て、思ったんだ。あたしはただ、羨ましかっただけなんだ。あやめとかまひるみたく、人間とうまくやってる連中がさ」

「うん」

それも、知ってる。
だって果凜、あたしが一緒に行こうって言ったとき、あんなに安心したような顔してたじゃん。

「まーあれだよ、果凜」

ぱし、と果凜の背中を叩く。

「なるようになるって」

すると果凜はきょとんと目を小さく見開いたあと、にっと八重歯を覗かせた。

「サンキュ、ちとせ」

わしっと頭を撫でられた。
髪がぐしゃぐしゃになった。
だけど、それは不快ではなくて心地好い感覚。

『あら、何か言いたそうね』

あたしの後ろから聞こえる、あやめの声。
それは、ゴルバットに向けられたものだった。
視線だけ少し後ろにやれば、少し戸惑いながらゴルバットは口を開いた。

『……や、なんつーかさ。姐御、変わったなって』

「そっかなぁ。あたしはそんな変わったつもり、ねーんだけどなぁ」

振り向くことなく前を向いたまま、果凜は苦笑を漏らした。

「やー、あんたあたしから見ても変わったと思うよ」

いやマジで。
だって果凜、こんなにも丸く笑うようになったじゃん。

「そっかぁ?……まあ、あんたが言うんなら、変わったのかもしれねーなぁ」

嬉しいような残念なような、そんな複雑そうな表情で果凜はぽつりと呟いた。

「うーん、まあそんなに気にしなくてもいいんじゃ、」

『きゃーっ!』

そう遠くない場所から、まだ幼さの残る声が聞こえた。
それはあたし以外にもしっかり聞こえていたようで、

「くそ……っ!」

「あ、果凜!」

舌打ちひとつして、果凜はその声が聞こえた方へ走り出した。

『姐御!』

それに続くようにして、ゴルバットは果凜の後を追う。
あたしたちは顔を見合わせてひとつ頷くと、果凜たちが向かった方へと走り出した。


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