4 こつ、こつ、とシロガネの洞窟に足音が響く。 果凜の隣にあたし、少し後ろにあやめとゴルバット。 そしてまひる以下全員、その後に続く。 あやめ以外は、みんな人の姿をとっている。 (多分、あやめが擬人化しないのは自分と同じ種族がいるからだろう) 「……あたし、さ」 ぽつり、と果凜が口を開く。 薄暗いせいで、表情は読みづらい。 「あんたに出会うまで、人間が大嫌いだった。……人間だけじゃない、人間がのさばってるこの世界も、だ」 「うん、知ってる」 だって出会ったあの日、あんなにも敵意を剥き出しにしてたんだもん。 「……でも、あんたが来て、思ったんだ。あたしはただ、羨ましかっただけなんだ。あやめとかまひるみたく、人間とうまくやってる連中がさ」 「うん」 それも、知ってる。 だって果凜、あたしが一緒に行こうって言ったとき、あんなに安心したような顔してたじゃん。 「まーあれだよ、果凜」 ぱし、と果凜の背中を叩く。 「なるようになるって」 すると果凜はきょとんと目を小さく見開いたあと、にっと八重歯を覗かせた。 「サンキュ、ちとせ」 わしっと頭を撫でられた。 髪がぐしゃぐしゃになった。 だけど、それは不快ではなくて心地好い感覚。 『あら、何か言いたそうね』 あたしの後ろから聞こえる、あやめの声。 それは、ゴルバットに向けられたものだった。 視線だけ少し後ろにやれば、少し戸惑いながらゴルバットは口を開いた。 『……や、なんつーかさ。姐御、変わったなって』 「そっかなぁ。あたしはそんな変わったつもり、ねーんだけどなぁ」 振り向くことなく前を向いたまま、果凜は苦笑を漏らした。 「やー、あんたあたしから見ても変わったと思うよ」 いやマジで。 だって果凜、こんなにも丸く笑うようになったじゃん。 「そっかぁ?……まあ、あんたが言うんなら、変わったのかもしれねーなぁ」 嬉しいような残念なような、そんな複雑そうな表情で果凜はぽつりと呟いた。 「うーん、まあそんなに気にしなくてもいいんじゃ、」 『きゃーっ!』 そう遠くない場所から、まだ幼さの残る声が聞こえた。 それはあたし以外にもしっかり聞こえていたようで、 「くそ……っ!」 「あ、果凜!」 舌打ちひとつして、果凜はその声が聞こえた方へ走り出した。 『姐御!』 それに続くようにして、ゴルバットは果凜の後を追う。 あたしたちは顔を見合わせてひとつ頷くと、果凜たちが向かった方へと走り出した。 |