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「姉さん……もう、やめて」

スッとあやめとカイリューの間に割って入ったのは……龍妃。

「姉さんが男の人のことが嫌いなのはよく知ってる……でも、みんながみんな、悪い人じゃないわ」

しかし、カイリューはその言葉を聞き入れることなく、今度は龍妃を睨み付ける。

『貴女にはわからないわ……わかって、たまるもんですか!』

そう言うとカイリューはその拳を振り上げる。
……まずい、ドラゴンクローだ!
あんなのくらったら、龍妃なんて一撃で吹っ飛んじゃう……!

「カイリュー、やめなさい!」

激昂したカイリューには、イブキの制止の声も届かない。
それどころか、龍妃もそこから動く気配がない。


ちょっと、龍妃……なにやってるの?

はやく。

はやく、そこからうごいてよ。


そして、制止空しくカイリューの腕は振り下ろされ、あたしは思わずぎゅっと目をつむる。

しかし、次の瞬間聞こえてきたのは、龍妃の声じゃなかった。

『ぐ……!』

ゆっくりと目を開けば、

「千速!」

キングドラに戻った千速が、龍妃の前でカイリューの攻撃を受け止めていた。
脇腹につけられた傷は、とてもじゃないけど見てらんない。

「ち……千速、もう戻りな!龍妃も一度戻って!」

あたしは慌ててザックから2人のボールを探す……けど、慌てているせいかうまく見つからない。
(ちくしょう、いらないものばっかりぼろぼろ出て来る)

そんなあたしを見て千速は、ハ、と鼻で笑う。

『……ばーか、オレ前に言わなかったっけ?龍妃のためなら命懸けるって』

「ちは……ちはや、ちはや、」

龍妃はぼろぼろと涙を零しながら千速に歩み寄ると、その体をぎゅうと抱きしめた。

すると、それに動揺したのかカイリューはゆらりと一歩離れる。

『なんで……どうして?!』

『なんでって、大事な人守るのは当然だろ』

千速の言葉にカイリューの瞳から怒りの色が消え、代わりに戸惑いが浮かぶ。
……そろそろ、あたしの出番かな?

「あー……ねぇ、カイリューさん。あたしの言葉、聞こえる?」

頃合いを見計らって、一歩近付くと、カイリューは驚いてあたしを見つめる。

『貴女……は、』

「はろー、久しぶり。元気してた?」

戸惑いながらも、彼女はあたしの言葉にゆっくりと頷いたのだった。


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