7 「姉さん……もう、やめて」 スッとあやめとカイリューの間に割って入ったのは……龍妃。 「姉さんが男の人のことが嫌いなのはよく知ってる……でも、みんながみんな、悪い人じゃないわ」 しかし、カイリューはその言葉を聞き入れることなく、今度は龍妃を睨み付ける。 『貴女にはわからないわ……わかって、たまるもんですか!』 そう言うとカイリューはその拳を振り上げる。 ……まずい、ドラゴンクローだ! あんなのくらったら、龍妃なんて一撃で吹っ飛んじゃう……! 「カイリュー、やめなさい!」 激昂したカイリューには、イブキの制止の声も届かない。 それどころか、龍妃もそこから動く気配がない。 ちょっと、龍妃……なにやってるの? はやく。 はやく、そこからうごいてよ。 そして、制止空しくカイリューの腕は振り下ろされ、あたしは思わずぎゅっと目をつむる。 しかし、次の瞬間聞こえてきたのは、龍妃の声じゃなかった。 『ぐ……!』 ゆっくりと目を開けば、 「千速!」 キングドラに戻った千速が、龍妃の前でカイリューの攻撃を受け止めていた。 脇腹につけられた傷は、とてもじゃないけど見てらんない。 「ち……千速、もう戻りな!龍妃も一度戻って!」 あたしは慌ててザックから2人のボールを探す……けど、慌てているせいかうまく見つからない。 (ちくしょう、いらないものばっかりぼろぼろ出て来る) そんなあたしを見て千速は、ハ、と鼻で笑う。 『……ばーか、オレ前に言わなかったっけ?龍妃のためなら命懸けるって』 「ちは……ちはや、ちはや、」 龍妃はぼろぼろと涙を零しながら千速に歩み寄ると、その体をぎゅうと抱きしめた。 すると、それに動揺したのかカイリューはゆらりと一歩離れる。 『なんで……どうして?!』 『なんでって、大事な人守るのは当然だろ』 千速の言葉にカイリューの瞳から怒りの色が消え、代わりに戸惑いが浮かぶ。 ……そろそろ、あたしの出番かな? 「あー……ねぇ、カイリューさん。あたしの言葉、聞こえる?」 頃合いを見計らって、一歩近付くと、カイリューは驚いてあたしを見つめる。 『貴女……は、』 「はろー、久しぶり。元気してた?」 戸惑いながらも、彼女はあたしの言葉にゆっくりと頷いたのだった。 |