6 「あら、ちとせ。遅かったわね」 「あー、うん。ちょっとイブキんとこ行っててね……って、違う!なんであやめがここにいるの?!」 そもそも、たしか龍の穴って認められた人しか入れないんじゃなかったっけ? 「話は大体千速から聞いたわ。それで、ちょっとカイリューさんとお話を、ね」 「ち……ちょっと、ここにはどうやって入ったっていうの?!ちゃんと見張りはいたはずよ?」 イブキは当然顔パスだし、あたしも一族の人間だから顔パスで通れるけど、基本的には通行証が必要なはず……だけど。 「ごめんなさいね、ちとせ。少し、家の名前を借りたわ」 あやめは、にっこり微笑んで扇子で口元を隠し……って、 「あぁあああ!」 そうだ……あやめの扇子には、うちの家紋が入ってるんだった。 つまり、うちの家紋を知ってる人間にとっては、顔パスと同じ意味をもつ。 「あー……なるほどね、オッケー理解した」 なんでここに入れたかはわかったし、今議論すべきはそこじゃない。 「で、あやめはカイリューと何を話してたって?」 「あら、たいしたことじゃないのよ。ただ、この方がどうして"そう"なってしまったかの話をしていただけなのよ」 『嘘、嘘だわ!』 先程まで黙っていたカイリューの声が響く。 「あら、嘘ではないでしょう?」 対するあやめは冷静なもので、落ち着き払ってそれに答える。 『じゃあ、どうしてその人を連れて来たの?!』 「決まっているでしょう、千速は当事者だもの」 ねぇ、とあやめが千速の方に視線を遣れば、千速は「もう勘弁してくれ」とばかりに顔を青ざめさせた。 ……ほんっと、なっさけねーなぁ。 「……ともかく。貴女が男性を嫌いなのは勝手だけど、それに他人を巻き込むのは如何なものかしら」 『貴女には……!』 ぎゅ、とカイリューは唇を噛むような仕草をし、あやめを睨み付ける。 「もちろん、私には貴女のことなんてわからないわ。わからなくて当然ですもの」 『……っ、』 カイリューは拳を握りしめる。 しかしあやめは、怯まない。 「あら、私を攻撃する?どうぞ、貴女の方が私に対して何倍も有利よ」 あやめがここまで挑発的なのも珍しい。 多分……あやめは、怒ってるんだ。 そうしてあやめは、ゆったりと身構える。 「あや……っ、」 大丈夫。 一瞬振り向いたあやめは、にこりと微笑んだ。 |