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「あら、ちとせ。遅かったわね」

「あー、うん。ちょっとイブキんとこ行っててね……って、違う!なんであやめがここにいるの?!」

そもそも、たしか龍の穴って認められた人しか入れないんじゃなかったっけ?

「話は大体千速から聞いたわ。それで、ちょっとカイリューさんとお話を、ね」

「ち……ちょっと、ここにはどうやって入ったっていうの?!ちゃんと見張りはいたはずよ?」

イブキは当然顔パスだし、あたしも一族の人間だから顔パスで通れるけど、基本的には通行証が必要なはず……だけど。

「ごめんなさいね、ちとせ。少し、家の名前を借りたわ」

あやめは、にっこり微笑んで扇子で口元を隠し……って、

「あぁあああ!」

そうだ……あやめの扇子には、うちの家紋が入ってるんだった。
つまり、うちの家紋を知ってる人間にとっては、顔パスと同じ意味をもつ。

「あー……なるほどね、オッケー理解した」

なんでここに入れたかはわかったし、今議論すべきはそこじゃない。

「で、あやめはカイリューと何を話してたって?」

「あら、たいしたことじゃないのよ。ただ、この方がどうして"そう"なってしまったかの話をしていただけなのよ」

『嘘、嘘だわ!』

先程まで黙っていたカイリューの声が響く。

「あら、嘘ではないでしょう?」

対するあやめは冷静なもので、落ち着き払ってそれに答える。

『じゃあ、どうしてその人を連れて来たの?!』

「決まっているでしょう、千速は当事者だもの」

ねぇ、とあやめが千速の方に視線を遣れば、千速は「もう勘弁してくれ」とばかりに顔を青ざめさせた。
……ほんっと、なっさけねーなぁ。

「……ともかく。貴女が男性を嫌いなのは勝手だけど、それに他人を巻き込むのは如何なものかしら」

『貴女には……!』

ぎゅ、とカイリューは唇を噛むような仕草をし、あやめを睨み付ける。

「もちろん、私には貴女のことなんてわからないわ。わからなくて当然ですもの」

『……っ、』

カイリューは拳を握りしめる。
しかしあやめは、怯まない。

「あら、私を攻撃する?どうぞ、貴女の方が私に対して何倍も有利よ」

あやめがここまで挑発的なのも珍しい。
多分……あやめは、怒ってるんだ。

そうしてあやめは、ゆったりと身構える。

「あや……っ、」

大丈夫。
一瞬振り向いたあやめは、にこりと微笑んだ。


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テーマ「人外ファンタジー」
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