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「こんにちはー。イブキ、いる?」

あれからあたしは部屋を飛び出して、フスベジムへとやってきた。
なんだかんだで、みんな着いて来てくれる辺りがありがたい。

「ちげーよ、お前一人にして馬鹿されるのがよっぽど困るんだよ」

なんかひどく失礼な言葉が聞こえた気がしたけど無視してたら、もっそい勢いでジト目が飛んできた。

……ともかく。
ジムの入口近くにいた女の子(見覚えがないから、新入りに違いない)は「少し待ってて」と言い置いてジムの奥へと消えた……の、だが。

ガチャン!
ガタガタガタッ……ゴッ!

……なんか、えらい音が聞こえた気がする。
気になってダッシュでイブキが居る奥の間へと向かう……と。

「……やっぱりあなただったのね」

裏口の扉に手をかけたま、はぁあああ、と、盛大に溜息をついたのだった。
(床に飛び散った食器の破片はきっと気にしてはいけない)

「イブキってば、どこ行こうとしてたの?」

「……ちょっと野暮用よ、気にしないで」

扉にかけた手を下ろし、イブキはあたしの方を向く。
フスベに来たのも1年振りなら、イブキに会うのも1年振り。

昔からフスベにはよく来ていたから、小さい頃からイブキとはよく遊んでいたのだ。

「……嘘つけ。イブキさんで、だろが」

……背後からあたしにしか聞こえないくらいの小さな声でぼそりと聞こえたが、気にしてはいけない。
小さなことを気にしていては、大きな人間にはなれないのだ。

そりゃまあ……若き日の過ち、若気のいたりなんて誰にだってひとつやふたつはあるはずだ。
(諸君、ないとは言わせない!)

……ともかく。
若気のいたりはこの際さておいて、あたしはイブキをひた、と見据えた。

「あのね、イブキ。ちょっと聞きたいことがあって来たんだけど、」

「あなたが、わたしに?一体、何よ」

訝し気に眉を潜めたイブキだった……が。

「イブキさぁ、さっき、水色の髪した頭の悪そうな男と一緒にいなかった?」

あたしの言葉に、ビシィ!と音を立てて固まった。
相変わらずわかりやすいなぁ。

「……なんで、あなたが知ってるのよ」

絞り出すような声は、動揺に揺れている。

「いやぁ、あたしじゃなくて果凜がね」

くい、と親指で果凜を指せば、彼女は深く頷いた。
すると、見られたなら仕方ない、というふうにイブキは渋々肯定する。

「……そうよ、確かにわたしだけど……それがどうかしたの?」

あたしは龍妃に目配せすると、先程のあれこれを切り出した。


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