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「……んで、何でこうなったって?」

場所を移して、あたしとまひる、んで果凜は龍妃と向き合うようにして座る。
千速はとりあえずあやめに任せた。
(小夏もくっついてた気がするけど……まあ、なんとかなるっしょ)

……一応説明しておくと、あたし達はエンジュを出てから予定通りフスベへとやってきた。
長老様への挨拶も滞りなく済ませて、数日テキトーにお世話になって、次の地へ向かう……はず、だったんだけど。
どーやら、事態はそう簡単にはいってくれないらしい。

「龍妃ー、言わなきゃわかんないよー」

すると、龍妃は気まずそうに視線を泳がせたあと、ぽつぽつと口を開き始めた。

「あの……ね、ちとせさん。今朝、千速と龍の穴に行ってきたのよ」

龍の穴……言わずもがな、龍妃の出身地である。
せっかくフスベに来たんだし、まあ、別にどこに行くのもあたしはとやかく言うつもりはないけど。
(小夏ならともかく、子供じゃないんだから)

龍妃の話は続く。

「私、昔お世話になったお姉さんのところへ挨拶に行ったのよ。姉さんは……その、男性が苦手だから千速には待っててもらって。そしたら、その間に千速ってば……、」

ぎゅ、と龍妃は唇を噛んだ。

「千速ってば、勝手に着いてきて……お姉さんはそれに驚いてしまって……私、もうあの人に合わせる顔がないわ」

そこまで話したところで、龍妃はわっと泣き伏した。

「まひる、どう思うよ?」

すると、まひるは息をついて肩を竦める。

「どうもこうも。千速の話も聞かなきゃわかんねぇよ」

なんだよお前こんなときこそエスパー活用しろよ、とか思ったら、じろりと無言で睨まれた。
(反省は多少している)

さてどうしたものか、という微妙すぎて気まずい空気が漂う中、口を開いたのは意外なことに果凜だった。

「あのさぁ、龍妃。……いや、あたしの勘違いかもしんねぇからこれは話半分に聞いて欲しいんだけどさ」

全員の視線が果凜に注がれる。

「千速の近くにさ、なんつったかな……ほら、ここのジムリーダーの、」

「イブキ?」

「ああ、そうそう。イブキさんいなかったか?」

果凜の問いに、龍妃はしばらく考える素振りを見せたが、やがて小さく首を横に振った。

「ごめんなさい、よく覚えてないわ」

「なに、果凜。イブキと千速が一緒にいるの見たの?」

「いや、あたしもちらっとしか見てないから確証ないんだけどさァ。もしかしたら、何か関係あるんじゃねーかな、と思ってさ」

ふーむ……果凜の言う通りだとすれば、もしかするとイブキにも話を聞いたのがいいかもしんない。

と、なれば。

「うっし!今からイブキんとこ行くよ!」

「あ、おいちとせ!」

手掛かりがあるなら善は急げ、だ。
あたしは部屋を飛び出して、イブキがいるはずのフスベジムへとダッシュした。


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