1 「……行った?」 『いや、まだ店の中に2人。そいつらが出て行ったら、行くぞ』 「りょーかい」 突然だけど、今、ひっじょーにヤバい。 物陰に身を潜めつつ、まひるの言った通り向かいの店から2人出て行ったのを見送って、あたしは盛大に溜息をついた。 事の始まりは今朝一番のことだった。 ポケモンセンターで遅目の朝食をむさぼっているときのこと。 「ちとせ様ー!!」 ドタドタ、バタン!と、けたたましい音と共になだれ込んできたのは、見覚えのあるスキンヘッドの黒スーツ。 「げぇ!守弥!」 あたしの…というか、あたしの家のボディガード長の守弥を始めとする皆様が、息を切らせて食堂の入口に立っていた。 (正直こうして冷静に第三者目線から見ると、全員黒スーツにサングラスっていうのは何かコワいものがある気がする) 突然のことに、口に含んでいた牛乳が気管に入ってむせつつ、そんな微妙な苦しさに悶絶してるうちにも、守弥はつかつかとこっちに近付いて来る。 「げ、ではありません!さあ、帰りますよ!奥様も大層心配なさってます」 なんとか牛乳を飲み下して、あたしは守弥を睨み付ける。 「やだよ。あたし守弥のことは好きだけど、いくら守弥の言うことでも家には帰らないよ」 守弥はスキンヘッドに黒スーツにサングラスという、ぱっと見コワい外見だけど、すごく優しい。 だから、あたしは小さいときから守弥にはよく遊んでもらってたんだけど。 「何を…いいですか、ちとせ様、」 「よくないよ!じゃーね守弥!」 何か言おうとしていた守弥の言葉を遮って、あたしはダッシュで食堂から飛び出した。 (ああ、まだ朝ごはんが残ってるのに!) (ご飯を残すのは、最大級の悪だと思うのよ) っていうか、あたしがキキョウに居るって、何でこんなすぐにバレてんのよ! |