4 「あー、食った食った!」 あれからジムの裏にあるハヤトの家で、あたしとまひる、それに他の皆の分まで朝ごはんをご馳走になった。 ハヤトとツバサは既にご飯を済ませてたらしく、お茶をすすってるだけだったけど。 実家で食べ飽きたはずの和食の朝ごはんだけど、お世話になった身で文句を言うほど不躾ではないつもりだし、やっぱりなんだか安心する気がした。 「それでさ、ちとせさん」 お茶のお代わりを注ぎながら、ハヤトは言った。 「ジムに挑戦してるわけでもないなら、どうして冒険を?」 「いやぁ、話せば長いんだけどさ。あ、その前にハヤトも別にタメ口でいーよ。さん付けもイラナイ」 「そうですか?あ、でも敬語は癖なんで、」 「嘘つけ、ツバサにはタメじゃんよ」 「あ、いや、ツバサは慣れてるからっていうか、その、」 妙に慌てたハヤトがおもしろくて、ついついからかってしまうのだ。 「ぷ!ジョーダン!いいよ、別に話しやすいようで」 そしたらハヤトはほっと一息ついた。 「もう、ちとせさん脅かさないでくださいよ!」 「ごっめんごめん!いろいろ話すからさ、勘弁してよ」 別にハヤトやツバサになら、事情を話してもいいって気がした。 まひるも、他のみんなも別に異論はなさそうだし。 ハヤトたちは、あたしが例のエンジュの一族だと知ってびっくりはしてたけど、だからってあたしに対する態度は変わらなかった。 たったそれだけのことだけど、それが無性に嬉しくて。 「へぇ…エンジュの一族の話は聞いてたけど、まさかちとせさんが…」 「別にあたしはそんな家名とかどーでもいいんだけどさ。ただ、あたしの人生はあたしが決めたいし」 ず、と一口、お茶を口に含む。 「俺はちとせさんとは逆でさ、」 今度はハヤトが口を開いた。 「ずっと、父さんの背中に憧れてた。いつか、父さんみたいなすごい鳥使いになるって、それが目標だったんだ。だから、父さんにこのジムを任されたときは、すごく嬉しかったなぁ」 そういえば、いつだったかマツバから聞いたことがある。 ほとんどのジムは世襲制ではなく、実力が全てだと。 例えジムリーダーの家に生まれても、実力がなければその次を名乗ることはできない。 「ハヤトはえらいね」 素直に、そう思う。 自分の進みたい道が見えてて、それに向かって努力してて。 「いや、俺なんてまだまだで…!」 「照れんなよ。ハヤトはすごいよ、ほんとに」 マツバが「ハヤトんとこに行けばいい」って言った理由が、少しわかった気がした。 |