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「あー、食った食った!」

あれからジムの裏にあるハヤトの家で、あたしとまひる、それに他の皆の分まで朝ごはんをご馳走になった。
ハヤトとツバサは既にご飯を済ませてたらしく、お茶をすすってるだけだったけど。
実家で食べ飽きたはずの和食の朝ごはんだけど、お世話になった身で文句を言うほど不躾ではないつもりだし、やっぱりなんだか安心する気がした。

「それでさ、ちとせさん」

お茶のお代わりを注ぎながら、ハヤトは言った。

「ジムに挑戦してるわけでもないなら、どうして冒険を?」

「いやぁ、話せば長いんだけどさ。あ、その前にハヤトも別にタメ口でいーよ。さん付けもイラナイ」

「そうですか?あ、でも敬語は癖なんで、」

「嘘つけ、ツバサにはタメじゃんよ」

「あ、いや、ツバサは慣れてるからっていうか、その、」

妙に慌てたハヤトがおもしろくて、ついついからかってしまうのだ。

「ぷ!ジョーダン!いいよ、別に話しやすいようで」

そしたらハヤトはほっと一息ついた。

「もう、ちとせさん脅かさないでくださいよ!」

「ごっめんごめん!いろいろ話すからさ、勘弁してよ」

別にハヤトやツバサになら、事情を話してもいいって気がした。
まひるも、他のみんなも別に異論はなさそうだし。

ハヤトたちは、あたしが例のエンジュの一族だと知ってびっくりはしてたけど、だからってあたしに対する態度は変わらなかった。
たったそれだけのことだけど、それが無性に嬉しくて。

「へぇ…エンジュの一族の話は聞いてたけど、まさかちとせさんが…」

「別にあたしはそんな家名とかどーでもいいんだけどさ。ただ、あたしの人生はあたしが決めたいし」

ず、と一口、お茶を口に含む。

「俺はちとせさんとは逆でさ、」

今度はハヤトが口を開いた。

「ずっと、父さんの背中に憧れてた。いつか、父さんみたいなすごい鳥使いになるって、それが目標だったんだ。だから、父さんにこのジムを任されたときは、すごく嬉しかったなぁ」

そういえば、いつだったかマツバから聞いたことがある。
ほとんどのジムは世襲制ではなく、実力が全てだと。
例えジムリーダーの家に生まれても、実力がなければその次を名乗ることはできない。

「ハヤトはえらいね」

素直に、そう思う。
自分の進みたい道が見えてて、それに向かって努力してて。

「いや、俺なんてまだまだで…!」

「照れんなよ。ハヤトはすごいよ、ほんとに」

マツバが「ハヤトんとこに行けばいい」って言った理由が、少しわかった気がした。


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